「行政書士はなにをする人?」「行政書士と司法書士って何が違うの?」「どちらに相談すべき?」このような疑問をお持ちの方は少なくありません。本記事では、士業の基礎知識から、よく混同される行政書士と司法書士の違いまで、大阪の行政書士事務所で勤務する実務経験者が詳しく解説します。

士業(サムライ業)とは何か
士業の定義と社会的役割
弁護士、税理士、行政書士などの「〜士」という名称を持つ職業を、士業やサムライ業と呼びます。
各士業には国家資格が必要であり、法律、会計、登記などの高度な専門知識を活かして、国民の権利保護や社会の円滑な運営をサポートする重要な役割を担っています。
そして、弁護士は弁護人、司法書士は登記などその資格を持っている人にしか行えない「独占業務」がある資格が多いです。これによって専門性と信頼性が担保されています。独占業務とは、その資格を持っている人にしか行えない業務のことで、無資格者が報酬を得て行うと法律違反となります。
各士業には国家資格が必要であり、法律、会計、などの高度な専門知識を活かして問題解決やサポートにする役割があります。
八士業と十士業の分類
士業は「8士業」や「10士業」のくくりがあります。
8士業とは
- 弁護士
- 司法書士
- 弁理士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
- 海事代理士
10士業とは
- 弁護士
- 司法書士
- 弁理士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
- 公認会計士
- 中小企業診断士
- 不動産鑑定士
行政書士の業務内容を深く理解する
行政書士の基本的な役割
行政書士は行政書士法に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成等を行います。
行政書士は「街の法律家」とも呼ばれ、市民や企業にとって身近な法律の専門家として活躍しています。その業務範囲は非常に広く、作成できる書類の種類は1万種類を超えるともいわれています。
行政書士の三大業務
行政書士の業務は①官公署に提出する書類②その他権利義務又は③事実証明に関する書類を作成することです。
①官公署に提出する書類の作成
官公署とは、各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等を指します。行政書士は、これらの行政機関に提出する許可認可(許認可)等に関する書類の作成を主な業務としています。
具体的な例としては:
- 飲食店営業許可申請(保健所へ提出)
- 古物営業許可申請(警察署へ提出)
- 建設業許可申請
- 宅地建物取引業免許申請
- 産業廃棄物処理業許可申請
- 運送業許可申請
これらの許認可申請は、事業を始める際に必須となるものが多く、専門的な知識がなければ適切に申請することが困難です。
②権利義務に関する書類の作成
権利義務に関する書類とは、人々の権利や義務を明確にするための文書です。主なものとして:
- 各種契約書(売買契約、賃貸借契約、業務委託契約など)
- 遺産分割協議書
- 内容証明郵便
- 定款
これらの書類は、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」の観点から非常に重要です。法的に適切な形で作成することで、将来的な紛争を回避できます。
③事実証明に関する書類の作成
事実証明に関する書類とは、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいいます。具体的には:
- 各種議事録
- 実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)
- 申述書
これらの書類は、会社運営や各種手続きにおいて、事実関係を明確に証明するために必要となります。
行政書士の新しい業務領域
近年、行政書士の業務範囲は拡大を続けています。
特定行政書士制度 平成26年の行政書士法改正により、日本行政書士会連合会が実施する特定の研修を修了し、試験に合格した「特定行政書士」は、許認可等に関する審査請求、再審査請求等の行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、書類を作成することができるようになりました。
申請取次行政書士 地方出入国在留管理局長等に届出を行った申請取次行政書士は、外国人の在留資格に関する申請について、書類の提出や提示を行うことができます。
司法書士の業務内容を深く理解する
司法書士の基本的な役割
司法書士は、国民の権利の擁護と公正な社会の実現のため、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないという重い責任を負っています。
司法書士は「登記のスペシャリスト」として知られており、法務局、裁判所、検察庁などに提出する書類の作成と手続きの代理を主な業務としています。
司法書士の主要業務
司法書士法第3条に規定される主な業務は以下の通りです。
登記または供託に関する手続きの代理
司法書士の最も代表的な業務です。登記とは、不動産や会社の権利関係を公的に記録し、社会に公示する制度です。
不動産登記 不動産登記は、土地や建物の物理的状況、権利関係に変化が生じたときに、その旨を法務局が管理する登記簿に記載し、社会に公示することで、国民の権利と取引の安全を守る制度です。
- 所有権移転登記(売買、相続、贈与など)
- 抵当権設定登記
- 住所変更登記
- 相続登記
商業登記・法人登記 商業登記は、法人の設立から清算までの一定事項を法務局で登記して、法人の内容を公示することで法人に関する取引の安全性を確立する制度です。
- 会社設立登記
- 役員変更登記
- 本店移転登記
- 増資登記
- 定款変更登記
法務局に提出する書類の作成
登記申請書をはじめとする、法務局に提出する各種書類の作成を行います。これらの書類は法律に基づいた正確な形式が求められるため、専門家による作成が不可欠です。
簡易裁判所における訴訟代理業務
法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談を行うことができます。
この業務を行える司法書士は「認定司法書士」と呼ばれ、特別研修を修了し、法務大臣の認定を受ける必要があります。具体的には:
- 貸金返還請求訴訟
- 賃料請求訴訟
- 損害賠償請求訴訟
- 敷金返還請求訴訟
ただし、訴額が140万円を超える場合は弁護士の領域となり、司法書士は代理できません。
司法書士の付帯業務
供託業務
供託業務は、有価証券や金銭などを国家機関の供託所である法務局に預けて、支払うべき相手に分配する手続きです。
例えば、家賃の値上げをめぐって大家が従来の家賃を受け取らない場合、借主は家賃を法務局に供託することで債務を免れることができます。
成年後見業務
判断能力が不十分な高齢者や障がい者の権利を守るため、成年後見人として選任され、財産管理や身上監護を行います。超高齢社会を迎えた日本において、この業務の需要は年々増加しています。
企業法務コンサルティング
社内に法務部を設置していない中小企業にとって、司法書士は重要な存在です。株主対応、法的文書の整備、事業承継など、企業法務全般についてアドバイスを行います。
行政書士と司法書士の決定的な違い
よく「行政書士」と「司法書士」の違いとはよく聞かれます。
どちらも弁護士や税理士と違って業務内容のイメージがつきにくく、行政書士ができる業務範囲が広いこと(1万種類ともいわれています。)やどちらも相続や会社設立の業務を行えることが原因と考えます。
主要業務の違い:許認可か登記か
行政書士の主な業務:許認可申請 行政書士は、特定の事業を行うために行政機関から許可や認可を受けるための申請を主な業務としています。つまり、「これから事業を始めたい」「新しい営業を行いたい」という場合に必要となる手続きの専門家です。
司法書士の主な業務:登記申請 司法書士は、既に存在する権利関係を公的に記録する登記を主な業務としています。不動産の所有権移転、会社の設立、役員の変更など、「権利関係を明確にする」ための手続きの専門家です。
申請先の違い:官公署か法務局か
行政書士の申請先:各官公署(行政機関)
- 保健所(飲食店営業許可など)
- 警察署(古物営業許可など)
- 都道府県庁(建設業許可など)
- 運輸局(運送業許可など)
- 市区町村役場(各種届出など)
司法書士の申請先:法務局
- 不動産登記
- 商業登記・法人登記
- 供託手続き
- その他法務局が所管する手続き
この申請先の違いは、両者の業務を理解する上で非常に重要なポイントです。許認可や登記はそれぞれの独占業務になるため、行政書士の許認可業務を司法書士が行うことや、登記業務を行政書士が行うことは違反になります。
扱う法律の違い
行政書士
- 行政手続法
- 各種許認可関連法(食品衛生法、建設業法、宅地建物取引業法など)
- 民法(契約法、相続法など)
- 会社法(定款作成など)
司法書士
- 不動産登記法
- 商業登記法
- 民法(物権法、債権法など)
- 会社法(登記関連)
- 民事訴訟法(認定司法書士の場合)
簡単に「行政書士」と「司法書士」の違いとは
行政書士の主な業務は許認可申請で官公署に申請する。
司法書士の主な業務は登記申請で法務局に申請する。
実務における行政書士と司法書士の連携
相続手続きにおける役割分担
相続手続きは、複数の専門家が関与する典型的な場面です。
行政書士ができること
- 戸籍謄本の代行取得
- 法定相続人の調査・確定
- 相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続財産の調査
司法書士ができること
- 上記の行政書士業務すべて
- 相続登記(不動産の名義変更)
- 相続放棄の申述書作成
- 遺言執行者への就任
どちらもできないこと
- 相続税の申告(税理士の独占業務)
- 遺産分割協議の交渉代理(弁護士の独占業務)
相続登記が必要な場合は司法書士の関与が必須となりますが、不動産がない相続であれば行政書士のみで完結できます。ただし、相続人間で争いがある場合は弁護士の領域となります。
会社設立における役割分担
会社設立も両者が関与する代表的な業務です。
行政書士の役割
- 定款の作成
- 定款の認証手続き(公証役場)
- 許認可が必要な業種の場合の許認可申請
- 建設業許可
- 宅地建物取引業免許
- 産業廃棄物処理業許可
- 介護事業所指定申請
司法書士の役割
- 定款の作成
- 定款の認証手続き(公証役場)
- 会社設立登記の申請(法務局)
- 資本金の払込証明
実務的な対応 株式会社を設立する場合、行政書士は定款作成と認証までは行えますが、設立登記はできません。一方、司法書士は会社設立の全工程を完結できます。
ただし、設立後に許認可が必要な事業を行う場合、司法書士は許認可申請を行うことができません。このため、実務では以下のような連携が行われます:
- 司法書士が会社設立登記まで完了
- 行政書士が設立後の許認可申請を担当
または
- 行政書士が定款作成・認証まで担当
- 司法書士が設立登記を担当
- 行政書士が許認可申請を担当
このように、依頼者の負担を減らすため、士業同士が連携して業務を完結させることが一般的です。
状況別:どちらに相談すべきか
行政書士に相談すべきケース
事業を始めたい・営業許可が必要
- 飲食店を開業したい
- 建設業を始めたい
- 介護事業所を開設したい
- 運送業を始めたい
- 古物商を営みたい
外国人の在留資格関連
- ビザ申請・更新
- 永住許可申請
- 帰化申請
契約書・協議書の作成
- 業務委託契約書
- 賃貸借契約書
- 秘密保持契約書
- 遺産分割協議書(相続登記が不要な場合)
権利関係の整理(登記を伴わない場合)
- 内容証明郵便の作成
- 契約関連の相談
司法書士に相談すべきケース
不動産の名義変更
- 不動産を売買した
- 不動産を相続した
- 不動産を贈与した
- 住宅ローンを完済した(抵当権抹消)
会社・法人の登記
- 会社を設立したい(登記まで完結したい場合)
- 役員が変更になった
- 本店を移転した
- 会社名を変更した
- 資本金を増やした
金銭トラブル(140万円以下)
- 貸したお金が返ってこない
- 家賃を払ってくれない
- 敷金を返してもらえない
成年後見が必要
- 認知症の親の財産管理
- 障がいのある家族の支援
弁護士に相談すべきケース
どちらの士業も対応できない、または対応すべきでない場面もあります:
訴訟額が140万円を超える民事訴訟 刑事事件 遺産分割で相続人間に争いがある 複雑な法律問題で訴訟を見据えた対応が必要
これらの場合は弁護士の専門領域となります。
士業選びで失敗しないためのポイント
専門分野を確認する
行政書士も司法書士も、業務範囲が非常に広いため、多くの専門家は特定の分野に特化しています。例えば:
行政書士の専門分野例
- 建設業許可専門
- 入管業務(ビザ)専門
- 相続・遺言専門
- 会社設立・法務専門
司法書士の専門分野例
- 不動産登記専門
- 商業登記専門
- 相続・遺言専門
- 債務整理専門
依頼する前に、その専門家がご自身の案件に対応した実績があるかを確認することが重要です。ウェブサイトやブログ、実績紹介などで専門分野を明示している事務所を選びましょう。
報酬額を事前に確認する
各業務の報酬額は、各行政書士が自由に定め、事務所の見やすい場所に掲示することとなっています。司法書士も同様です。
同一業務でも、具体的な取扱い内容や案件の複雑さによって報酬額には大きな差が生じます。必ず依頼前に:
- 見積もりを取得する
- 報酬体系を確認する
- 追加費用の可能性を確認する
- 支払い時期を確認する
複数の事務所から見積もりを取り、サービス内容と報酬のバランスを比較検討することをお勧めします。
相談のしやすさも重要
専門知識や実績も大切ですが、気軽に相談できる関係性も重要です:
- 初回相談は無料か
- 説明が分かりやすいか
- 質問に丁寧に答えてくれるか
- レスポンスが早いか
- 事務所の雰囲気は良いか
長期的な関係になることも多いため、信頼できる専門家を選びましょう。
ワンストップサービスの活用
依頼者が複数の士業事務所に足を運ばなくて済むよう、現在、各士業者は、複数の士業者でネットワークを組み、「ワンストップサービス」の試みを始めています。
例えば、相続手続きでは:
- 行政書士・司法書士:相続人調査、遺産分割協議書作成、相続登記
- 税理士:相続税申告
- 弁護士:遺産分割調停
これらを連携して対応できる事務所であれば、依頼者の手間が大幅に削減されます。ネットワークを持つ事務所を選ぶことも一つの方法です。
まとめ:適切な専門家選びで手続きをスムーズに
行政書士と司法書士の違いの要点
行政書士
- 主な業務:許認可申請
- 申請先:官公署(行政機関)
- 得意分野:事業開始、外国人ビザ、契約書作成
- キーワード:「これから事業を始める」「許可が必要」
司法書士
- 主な業務:登記申請
- 申請先:法務局
- 得意分野:不動産・会社登記、簡易裁判所での訴訟代理
- キーワード:「権利を登記する」「名義変更」
士業との上手な付き合い方
- まずは相談から どの専門家に相談すべきか分からない場合でも、まずは気軽に相談してみましょう。適切な専門家であれば、他の士業を紹介してくれることもあります。
- 早めの相談が重要 手続きには期限があるものも多く、直前になって慌てると選択肢が限られます。計画段階から相談することで、最適な方法を選べます。
- 必要な書類は早めに準備 どの手続きでも、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要です。専門家からの指示を受けたら、速やかに準備しましょう。
- 不明点は遠慮なく質問 専門用語が多く、分かりにくいことも多いですが、納得できるまで質問することが大切です。良い専門家は、分かりやすく説明してくれます。
よくある質問
Q: 会社設立は行政書士と司法書士、どちらに頼むべきですか? A: 設立登記まで一括して依頼したい場合は司法書士、設立後に許認可が必要な場合は最初から両者に相談するか、ワンストップサービスを提供している事務所を選ぶとスムーズです。
Q: 相続手続きはどちらに相談すべきですか? A: 不動産がある場合は司法書士(相続登記が必要)、不動産がない場合は行政書士でも対応可能です。相続税が発生する可能性がある場合は、税理士との連携も視野に入れましょう。
Q: 費用はどちらが安いですか? A: 業務内容によって異なるため、一概には言えません。同じ業務でも事務所によって報酬額は異なりますので、必ず見積もりを取得して比較しましょう。
Q: 行政書士や司法書士に相談する際、何を準備すればよいですか? A: まずは相談内容を整理しておきましょう。具体的な書類については、初回相談時に専門家から指示があります。一般的には、関連する契約書、登記簿謄本、戸籍謄本などが必要になることが多いです。
まとめ
士業とは、法律によって、その資格を持つ人だけが行える業務(独占業務)が定められている点です。
行政書士と司法書士は混同されやすく、主な業務範囲と専門とする手続きの分野が大きく異なり、最も大きな違いはどこに提出する書類を専門とするかという点です。
そのため士業同士で連携を取り合いできない業務を補い合い、業務を完了させることが多いです。
許認可申請、契約書作成、相続手続きなど、行政書士業務に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。初回相談では、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決方法をご提案いたします。

