昨今、太陽光発電所の銅ケーブル盗難などが大きな社会問題となっています。これを受けて、2026年(令和8年)6月1日から、金属買取業に関する新しい法律(盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号))が施行されます。
これまで各都道府県の条例で決まっていたルールが法律に変わることで、手続きや義務が大きく変わります。この記事では、概要・許可申請の流れ・違反した場合のリスクなど金属買取事業者が正しく営業を続けるためのポイントをわかりやすく解説します。
管轄によって手続き書類や注意点が異なりますので詳しくは各都道府県にお問い合わせください。
なぜ今、新しい法律が必要になったのか?(背景と目的)
これまで金属買取は各自治体のルールに委ねられていましたが、被害の拡大に伴い、国全体で足並みを揃える必要が出てきました。
「条例」から「法律」への格上げ
これまで兵庫県・大阪府・奈良県など一部の自治体では独自の「金属くず営業条例」で規制してきましたが、全国一律の基準はありませんでした。今回の新法制定により、全国どこでも同じ厳しいルールが適用されることになります。
金属くず条例の概要(奈良県金属くず営業条例参照)
「金属くず」とは銅・鉄・アルミニウム・真鍮・ステンレスなどを指し、本来の生産目的に従って売買・交換・加工・使用されないような「金属くず」を業として営業所を設けて金属くずの売買、交換、委託(売買、交換)をすることを「金属くず業」といいます。金属くず業を行う場合は、「金属くず商」の申請を行い、許可を受けること必要です。
現在全国の17道府県において、金属くず条例が制定されています。
条例を制定している道府県
北海道、茨城県、千葉県、長野県、静岡県、福井県、岐阜県、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県
条例を制定している道府県にある事業者に課せられている主な義務は、売買等時における相手方の確認、不正品の疑いがあると認めるときの警察への申告、帳簿等への記載等があります。条例が制定されている道府県においては、許可や届出が必要になります。
17道府県においては規制が及びますが、全国的な実態が把握できないことや、条例のない県での盗難の売却が容易であるといった問題がありました。
深刻化する「金属盗難」と社会への影響
近年、全国各地で太陽光発電設備からの金属ケーブル盗難が急増しています。これにより発電がストップするなど、国民経済にも大きな悪影響を及ぼしており、犯行を未然に防ぐための強力な対策が求められるようになりました。

金属盗難の半数は銅で全体の被害額は約130億円にも及びます。銅は他の金属に比べて高額で売買されているためです。また、金属類の盗難事件のニュースが度々見受けられますが、外国人が逮捕されたニュースが多い印象です。金属資源の価値が高まる昨今、新しい法律の制定重要になっています。
この法律の最大の目的は、盗んだ金属を簡単に売却できない仕組みを作ることです。全国の買取業者に本人確認や記録の保存を義務付けることで、盗品を市場から締め出す対策を徹底します。
これまで金属くずの営業は、一部の自治体が定める『条例』による規制に留まっており、全国規模での統一的な取り締まりが困難な状況にありました。しかし、昨今の金属盗難の深刻化を受け、国全体で盗品処分を徹底的に防止するため、ついに全国一律の新たな法律が制定されました。
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の概要
2026年(令和8年)6月1日から施行される「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」の主な目的は特定金属製物品(銅など)の窃盗を防止するため、買受業者に本人確認などを義務付け、盗品の処分を防止すること、および犯行に悪用される工具の隠匿携帯を禁止することです。そして、特定金属買取業を行う場合は、営業所を管轄する警察署に届け出をしなければなりません。
対象となる「特定金属」と規制される「道具」
2026年(令和8年)6月1日から施行される新法の目的は、主に特定金属製物品の窃取の防止です。この特定金属とは何を指すのでしょうか。
「特定金属」とは何を指すのか?
主に盗難が多く多発している、「銅」を使用した物品が対象です。具体的には、切断されて本来の使い方ができなくなった金属くずなどです。犯罪の状況や経済的価値を考慮し、特に盗難防止の必要性が高いものが指定されています。すでに「古物営業法」で中古品(エアコンの室内機など)として扱われているものは、この法律の対象からは除かれます。
犯行用具(指定金属切断工具)の携帯禁止
今回の法律では、買取だけでなく盗みの道具も規制されます。正当な理由なく、ケーブルカッターやボルトクリッパーなどを隠して持ち歩くことは禁止され、違反すると罰則の対象となります。
買取事業者に課される義務
法律を守って営業を続けるためには、日々の業務で以下のポイントを徹底する必要があります。
① 本人確認の徹底(対面・非対面)
金属を買い取る際は、相手の氏名、住所、生年月日(法人の場合は名称や所在地)を必ず確認しなければなりません。過去に取引があった相手でも、特定の条件(振込による支払いなど)を除き、原則としてその都度確認が必要です。
② 「3年間の記録保存」が必須
本人確認の結果や取引の内容(日付、品目など)は、すぐに記録を作成し、3年間保存しなければなりません。警察の立ち入り検査があった際、この記録がないと営業停止などの処分を受ける可能性があります。
③ 怪しいと思ったら即通報
持ち込まれた金属が盗品の疑いがあると感じた場合、直ちに警察官へ申告する義務があります。この申告を怠ることも、法律違反とみなされる場合があります。
届出の方法と必要書類
新法の施行に伴い、特定金属買取業を行う場合は、営業所を管轄する警察署(都道府県の公安委員会)に届け出が必要です。
これから営業を始める方はもちろん、すでに営業している方も改めて「届出」が必要になります。
- これから始める方: 営業を開始する前に届出が必要です。
- すでに営業している方: 法律が始まってから3ヶ月以内に届出を済ませれば、そのまま営業を続けられます。
届け出を行う際には事前に管轄の警察署に相談を行うことが推奨されます。
必要な書類と料金
届出には、氏名や住所、営業所の場所などを書いた「届出書」に加え、政府が定める添付書類が必要になります。なお、この法律に基づく届出に手数料(料金)がかかるという記載は現在の法律案にはありません(※別途、国家公安委員会規則で定められる可能性がありますが兵庫県では手数料は不要です)。
手続きにかかる時間(標準処理期間)
届出が受理されると、その営業所を識別するための「届出番号」が通知されます。具体的な処理日数は地域や状況によりますが、不備があると営業に支障が出るため、余裕を持って申請することが重要です。(現状の奈良県の金属くず条例だと標準処理期間が40日ですので、新法でも同等だと考えられます。)
違反した場合の罰則と営業停止リスク
① 営業所への表示義務
届出をした事業者は、営業所の見やすい場所に氏名や届出番号を表示しなければなりません。また、一定規模以上の事業者はインターネット上でもこれらの情報を公開する義務があります。
② 警察による立ち入りと指示
警察は、必要があると認めた場合に営業所や保管場所へ立ち入り、帳簿や金属くずの検査を行うことができます。不備がある場合は、本人確認の徹底などの「指示」が出されることがあります。
③ 懲役や罰金、営業停止命令
指示に従わない場合や、無届で営業した場合には、6ヶ月〜1年以下の拘禁刑、または50万〜100万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、最長6ヶ月の営業停止を命じられることもあります。
兵庫県のように法律の施行に合わせて条例を廃止する自治体も出てきています。ですがこの法律の規定は、地方公共団体が金属くずの買受けに関して、独自に条例で必要な規制を定めることを妨げるものではありません。したがって、地域によっては、法律に加えてさらに独自のルール(条例)が存続・制定される可能性があります。
行政書士に手続きを依頼する3つのメリット
新しい法律への対応は、日々の業務で忙しい事業者様にとって大きな負担となります。行政書士に依頼することには、以下のような大きなメリットがあります。
① 複雑な書類作成と添付書類の収集を丸投げできる
新法の届出には、法律で定められた正確な記載が求められます。行政書士に依頼すれば、届出書の作成はもちろん、役所で取得しなければならない複雑な添付書類の収集も代行してもらえるため、平日の日中に警察署へ行く時間が取れない会社員やフリーランスの方は、代理での申請手続きを依頼でき、皆様は本業に集中できます。
② 法令遵守(コンプライアンス)の体制構築まで相談可能
単に「書類を出す」だけでなく、日々の「本人確認」や「記録保存」をどのように行えば法律違反にならないか、具体的なアドバイスが受けられます。現場に即した管理体制を作ることで、将来的なリスクを未然に防げます。
③複数の営業所や複雑なケースに対応
代表取締役や取締役が外国人の場合、複数の都道府県で営業所を設ける場合、法人での申請など、手続きが複雑になるケースでは専門家のサポートが有効です。
まとめ
今回の法改正は、単なる事務手続きの変更ではなく、金属盗難という社会問題に対する国を挙げた取り組みです。届出を忘れると、これまで長年続けてきた商売が継続できなくなる恐れがあります。
「届出をする時間がない」「書類の書き方がわからない」といった不安がある方は、ぜひお早めにご相談ください。専門家が貴社のスムーズな新法対応をサポートいたします。
※実際の運用にあたっては、管轄の警察署や最新の国家公安委員会規則を必ずご確認ください。
参考:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号) ⾦属くず営業条例が廃⽌されます 新法に係る届出が必要となります 第一回金属盗対策に関する検討会資料

ℳ/大阪の行政書士補助者
2023年行政書士試験合格
大阪市内事務所に勤務している行政書士補助者です。
取扱業務:在留資格、古物商、宅建業、会社設立
お気軽にお問い合わせください。

