現在の日本では人手不足は深刻な課題となっています。現場では、生産性を高める工夫をしたり、国内での人材採用に力を尽くしたりと、懸命な取り組みが続けられています。しかし、それでもなお、必要な人員を十分に確保することが難しいというケースは決して少なくありません。
こうした切実な人手不足を解消し、即戦力となる外国人材を受け入れるための仕組みとして運用されているのが「特定技能」制度です。
特定技能には「1号」と「2号」の2つの区分がありますが、今、特筆すべき事態が進行しています。外食業分野における特定技能1号の在留者数が、2026年5月頃には受入れ見込数の上限である5万人に達する見込みとなりました。これを受け、農林水産省および出入国在留管理庁は、2026年4月13日より外食業分野の特定技能1号の在留資格認定証明書の交付などを一時的に停止する方針を固めています。
本記事では、この急激な運用変更の詳細と、改めて整理しておきたい特定技能制度の仕組みについて詳しく解説します。
特定技能制度の概要
在留資格「特定技能」とは
在留資格「特定技能」は、深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度です。
特定技能には「1号」と「2号」という2つの在留資格が設けられており、2号は1号と比較して、より熟練した専門的な技能が求められる資格として位置づけられています。
現在、特定技能1号の資格で日本国内にて就労が認められているのは、以下の16分野に及んでいます。
| 特定技能1号の分野 | 主な業務内容 |
| 介護 | 身体介護(入浴・食事・排泄の介助等)および、これに付随する支援業務。 |
| ビルクリーニング | 建築物内部の清掃および環境衛生の維持・管理に関する業務。 |
| 工業製品製造業 | 金属加工、電気電子機器組立て、素形材鋳造など、製造現場における生産・加工業務。 |
| 建設 | 土木・建築工事における新設、改築、維持、修繕に係る作業等の実務全般。 |
| 造船・舶用工業 | 溶接、塗装、鉄工、仕上げ等の船舶建造および舶用工業製品の製造・修理。 |
| 自動車整備 | 自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備を伴う保守・修理業務。 |
| 航空 | 空港における地上支援(グランドハンドリング)および手荷物・貨物取扱業務等。 |
| 宿泊 | フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊施設の提供に伴う業務。 |
| 自動車運送業 | トラック、タクシー、バスの運転およびそれに付随する貨物・旅客運送業務。 |
| 鉄道 | 軌道検測作業等の軌道等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務。 |
| 農業 | 耕種農業(栽培・収穫・出荷選別)および畜産農業(飼養管理・出荷作業等)。 |
| 漁業 | 漁船漁業における漁具の操作・水揚げ、および養殖業における管理・収穫。 |
| 飲食料品製造業 | 酒類を除く、飲食料品の製造・加工および安全衛生管理。 |
| 外食業 | 飲食店における飲食物の調理、接客サービス、および店舗管理の付随業務。 |
| 林業 | 植栽・下刈り等の育成管理、およびチェーンソー等を用いた伐採・造材業務。 |
| 木材産業 | 原木の製材、合板・木材チップの製造、および集成材等の二次加工業務。 |
特定技能「1号」と「2号」の違い
特定技能1号の在留資格では、通算で最大5年間の就労が認められています。家族を同伴して入国することは認められていませんが、報酬面では日本人と同等以上の給与が支払われることが義務付けられています。
また、日本語学習の機会の提供や、日常生活・業務面における企業からの手厚い支援(支援計画の実施)を受けることができるのも大きな特徴です。
さらにより高い専門性が求められる特定技能2号に移行すると、在留期間の更新に上限がなくなります。また、要件を満たせば配偶者や子などの家族を日本に呼び寄せることも可能となり、日本で長期的に安定して暮らす道が開かれます。
| 区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験を必要とする技能 | 熟練した技能(より高度な専門性) |
| 評価方法 | 技能試験・日本語試験への合格 (技能実習2号の良好修了者は免除) | 高度な技能試験への合格および 一定の実務経験 |
| 在留期間 | 通算5年まで | 更新により制限なく滞在可能 |
| 付与される期間 | 1年、6か月、または4か月(個別に指定) | 3年、1年、または6か月 |
| 家族の帯同 | 原則として不可 | 可能(配偶者、子)※在留資格が必要 |
| 支援の対象 | 所属機関または登録支援機関による支援対象 | 支援の対象外 |
| 主な活動内容 | 特定産業分野における一定の習熟を要する業務 | 特定産業分野における監督者としての役割等 |
在留資格「特定技能」の取得要件
特定技能1号として働くためには、原則として「日本語試験」と、各分野の専門性を測る「技能試験」の両方に合格する必要があります。ただし、以前に技能実習2号を良好に修了した方については、その実習で習得した職種と同じ分野で働く場合に限り、これらの試験が免除されます。もし技能実習とは異なる分野で就労を希望する場合は、新たにその分野の技能試験に合格しなければなりません。
これらの試験に合格、あるいは免除された後、受け入れ先となる企業と雇用契約を締結することで、出入国在留管理局へ特定技能の在留資格変更申請を行うことが可能となります。
特定技能制度の「外食業分野」とは
外食業分野における主な業務範囲
特定技能「外食業」では、現場のオペレーションから店舗運営の補助まで、幅広く従事することが可能です。
(1)飲食物調理
食材の仕込み、加熱・非加熱調理、調味、盛り付け、飲料の調製などのお客様に提供する料理の準備から調理、仕上げまでの一連の作業を担当します。
(2)接客サービス
席案内、注文伺い、配膳・下膳、会計、予約受付、給食事業所での連絡調整などのお客様が食事を楽しむための対面サービスや、付随するフロア業務全般を担います。
(3)店舗管理
衛生管理、シフト管理、求人・研修事務、顧客情報管理、発注・検品、メニュー開発、広告作成、清掃および設備のメンテナンスなど店舗を円滑に運営するために必要な、調理・接客以外のバックヤード業務や管理業務を行います。
特定技能「外食業」で就労可能な事業所
- 店内で飲食を提供する施設
- テイクアウト専門店(持ち帰り)
- 客の注文に応じて調理した飲食物を提供する、客席を持たない持ち帰り専門店。
- デリバリー・配食サービス(配達)
- 仕出し料理、弁当屋、宅配専門店、配食サービス事業所など。
- ケータリング・給食事業
- 客の指定する場所で調理・提供を行うケータリングや、医療・福祉施設内の給食部門。
事業所全体の売上のうち、飲食部門がメインである必要はありません。宿泊施設内のレストランや病院内の給食部門などでの就労も可能です。特定技能外国⼈の雇⽤は直接雇⽤(派遣✖)とし、フルタイム(労働⽇数が週5⽇以上かつ年間217⽇以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上)勤務であることが必要です。
就労できないケース・禁止事項
以下のケースは「外食業」の範囲外、または法律で禁止されているため、特定技能外国人を従事させることはできません。
1. 卸売り(B to B取引)
提供する相手が「自分で食べる人」ではなく、「不特定多数に転売する目的で仕入れる業者」である場合は、卸売業に該当するため対象外となります。
2. 風営法に基づく「接待」の禁止
風営法第2条第3項に規定される「接待」に従事させることは、関連業務を含め一切禁止されています。
- 禁止される「接待」の例:
- 客の隣に座って話し相手になる。
- 客と一緒に歌ったり、ダンスをしたりする。
- 特定の客に対して過度にもてなす(歓楽的な雰囲気を醸し出す行為)。
特定技能1号(外食業)を取得するための条件
2つの試験が必須
外食業分野で「特定技能1号」の在留資格を得るには、原則として希望者は「技能試験」と「日本語試験」の両方に合格する必要があります。ただし、特定の経験を持つ方については、これらの試験が免除される仕組みとなっています。
必要な試験の合格
初めてこの分野に挑戦する方や、関連のない職種から移行する方は、以下の試験に合格しなければなりません。
- (1)技能水準および業務上必要な日本語能力の確認
- 「外食業特定技能1号技能測定試験」
- 国内または国外で実施されており、外食業の業務に必要な知識・技能、および専門的な日本語能力を測る試験です。
- (2)基本的な日本語能力の確認
- 以下のいずれか一つの合格が必要です。
- 「日本語能力試験(JLPT)」(N4以上)
- 「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」
特定技能「外食業」の申請に必要な各試験のスケジュールや申し込み方法については、以下のウェブサイトをご参照ください。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) https://www.jpf.go.jp/jft-basic/ (独立行政法人 国際交流基金)
日本語能力試験(JLPT) https://www.jlpt.jp/ (独立行政法人 国際交流基金 / 公益財団法人 日本国際教育支援協会)
外食業特定技能1号技能測定試験 https://otaff.or.jp/ (一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構:OTAFF)
試験が免除されるケース
日本での技能実習経験がある方のうち、以下の条件を満たす場合は試験が免除されます。
- 「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を良好に修了した方
- この実習を修了した方は、外食業において必要な技能と日本語能力をすでに備えているとみなされるため、上記の(1)および(2)の試験がすべて免除されます。
特定技能1号(外食業)を雇用するための条件
特定技能「外食業」および「飲食料品製造業」の分野で外国人材を受け入れる際、「食品産業特定技能協議会」への加入が必要です。制度の適切な運用と円滑な支援のために設けられたこの仕組みについて、要点を整理しました。
食品産業特定技能協議会(協議会)とは
この協議会は、農林水産省や関係団体、受け入れ企業、登録支援機関などが連携し、制度の周知や法令遵守の啓発、地域ごとの人手不足状況の把握などを行うための組織です。外食業分野と飲食料品製造業分野が共同で設置・運営しています。特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、必ずこの協議会の構成員にならなければなりません。
また、支援業務を委託する場合の登録支援機関についても、以下の条件を満たしている必要があります。
- 協議会の構成員であること
- 農林水産省および協議会に対して必要な協力を行っていること
加入のタイミングと注意点
初めて特定技能外国人を受け入れる予定がある場合は、出入国在留管理庁への在留諸申請を行う前に、協議会への入会手続きを済ませておく必要があります。
- 2人目以降の受け入れ: すでに加入済みの場合は、改めて加入し直す必要はありません。
- 審査期間にご注意: 協議会の加入審査には通常2〜3ヶ月ほどの時間を要します。ビザ申請のスケジュールに影響が出ないよう、余裕を持って計画的に申請を進めることが重要です。
現在のところ、協議会への入会金や年会費などの費用は徴収されていません。
協議会への加入は、特定技能制度を適正に利用するための不可欠なステップです。受け入れを検討されている事業者様は、まずこの協議会への入会申請から着手することをお勧めします。詳細な入会方法や申請書類については、農林水産省の公式サイト等で最新の情報をご確認ください。食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について:農林水産省
外食分野は受け入れ停止へ―今後の対応は
今回の措置で「何が」「いつから」変わるのか
外食業分野の特定技能1号の在留者数は、2026年5月ごろに受入れ見込数の上限である5万人を超えることが予想されるため、農林水産省および出入国在留管理庁は2026年4月13日に在留資格認定証明書などの交付の一時的な停止措置をとる方針としました。今後は申請に際して以下の運用に変更になります。
特定技能1号(外食業分野)の在留資格認定証明書交付申請(COE)
今回の停止措置の主な対象は、海外から新たに入国する特定技能1号外国人です。具体的にはCOE(在留資格認定証明書)の新規交付が制限されるため、海外在住の人材を新たに採用することが難しくなります。4月13日以降に受理した申請については申請しても不許可になります。
4月13日以前の申請は、審査の上、受入れ見込数の範囲内で順次交付されますが、だし、現に在留している方からの在留資格変更許可申請を優先的に処理するため、交付までに相当な遅延が生じることが見込まれます。
特定技能1号外食業分野のCOE(在留資格認定証明書)申請は4月13日以降は不許可になるため、新しく海外から外食業分野で呼ぶことができなくなります。
特定技能1号(外食業分野)への在留資格変更許可申請
変更申請も、4月13日以降に受理した申請は、原則として不許可となります。
ただし、すでに外食業分野で特定技能1号として活動している方が、転職などに伴って改めて申請を行う場合は、4月13日以降も通常通り審査が行われます。
また、以下の条件に該当する方については、審査を経て受入れ枠の範囲内で順次許可が下りる仕組みとなっています。
- 技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了し、特定技能1号(外食業分野)に移行する方
- 既に外食業分野に係る特定活動(特定技能1号移行準備)の許可を受けており、特定技能1号(外食業分野)に移行する方
ただし、これらの条件を満たしていても、許可を出す時点での在留者数に余裕がない場合には、特定技能1号としての許可ではなく、移行準備のための「特定活動」への変更や、同資格での在留期間更新を案内される可能性があります。なお、この特定活動の更新は1回までと制限されている点に注意が必要です。
また、4月13日より前に受理された申請についても、基本的には受入れ見込数の範囲内で順次審査が進められます。こちらも同様に、最終的な許可のタイミングでの在留者状況によっては、特定技能1号ではなく「特定活動」による在留を案内されるケースが想定されています。
飲食店オーナーが今すぐ取るべき3つの行動
まず現在のスタッフの在留資格と更新時期を確認する
在留カードには「在留期限」が記載されています。今働いている外国人スタッフの在留期限がいつなのかを確認し、更新時期を把握することが最初のステップです。在留期間の更新手続き自体はこれまで通り行えるため、期限切れになる前に手続きを進めましょう。
採用計画を「国内在留者の活用」にシフトする
今後は海外からの新規採用が難しくなるため、企業にとっては「新規採用の制限」と「既存人材の活用強化」という二つの視点で対応を考える必要があります。すでに日本国内にいる特定技能の外国人スタッフの転職受入れや、技能実習修了者の採用に切り替える方法が現実的です。
今後の解除時期は未定であることを前提に動く
制度上は「一時的な措置」であるものの、解除時期が明確ではない点もリスク要因です。そのため、短期的な対応だけでなく、中長期的な人材戦略の再構築が必要になります。行政書士や登録支援機関に相談しながら、長期視点で採用計画を立て直すことをおすすめします。
行政書士に依頼するメリット
在留資格の手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、行政書士などの専門家に依頼することで以下のようなメリットがあります。
書類のミスや記載漏れを防ぐ
特定技能の申請書類は、種類が多く、記載内容も細かく決まっています。申請書類に業務範囲外の事項を誤って記載してしまうケースがあり、一度不許可になると二度目の申請も疑われる可能性があり、審査が不利に働くこともあります。また、単純な記載ミスや説明不足であっても必ずしも追加書類の提出を求める通知が来るとは限らず、唐突に不許可になる場合もあります。
制度の変更に即座に対応できる「情報のプロ」
今回の受入れ停止措置は、2026年3月27日に出入国在留管理庁が公表したものです。このように、特定技能制度は突然変更されることがあります。特定技能制度は今後の社会情勢によっては制度の内容に変更が生じる場合があり、特定技能制度はまだまだ流動的な制度といえます。制度の内容に変更が生じると提出書類や記入方法が変わる可能性があり、変更内容を迅速に把握し対応することが難しいかもしれません。行政書士は最新情報を常に把握しているため、状況に応じた最善の申請方法を提案可能です。
書類作成は「行政書士だけができる」国家資格の独占業務
「登録支援機関に頼めばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、登録支援機関は在留資格申請書類の作成はできません。申請書類の作成ができるのは、行政書士だけです。特定技能ビザの申請書類作成を外注する場合は行政書士への依頼となります。登録支援機関にお任せしているつもりが、実は法的にグレーな状態になっている場合もあります。コンプライアンスの観点からも、書類作成は行政書士に依頼することが安全です。
まとめ
2026年4月13日以降、外食業での外国人の新規採用はほぼできなくなります。
ただし、すでに働いているスタッフへの影響は限定的ですので、まず現状を整理することが大切です。
在留資格制度は突然変更されることが多いです。不安な点がある方は、まずは一度、専門家への相談を検討してみてください。
※本記事は、出入国在留管理庁・農林水産省の公式発表(令和8年3月27日付)をもとに作成しています。申請状況や個別ケースについては、専門家または最寄りの地方出入国在留管理局にご相談ください。

ℳ/大阪の行政書士補助者
2023年行政書士試験合格
大阪市内事務所に勤務している行政書士補助者です。
取扱業務:在留資格、古物商、宅建業、会社設立
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