外国人が日本で働くためには、在留資格の取得が必要不可欠です。しかし、多くの方が見落としがちなのが「日本語能力要件」の存在です。在留資格の種類によって求められる日本語レベルは大きく異なり、この理解不足が申請不許可の原因となるケースも少なくありません。在留資格「永住者」でも日本語能力が要件の一つに加わると、報道されています。本記事では、各在留資格で求められる日本語能力について詳しく解説します。

日本語能力試験の基礎知識と証明方法
1-1. 日本語能力試験(JLPT)の5段階レベル
日本語能力を客観的に証明する最も一般的な方法が、日本語能力試験(JLPT)です。国際交流基金と日本国際教育支援協会が実施する世界最大規模の日本語試験で、日本語を母国語としない人が試験を受けることができます。年齢制限はありません。試験は7月と12月の年2回行われ、日本の各都市の他、海外でも実施されています。
日本語能力試験(JLPT)はN1からN5までの5段階に分かれています。 最高レベルがN1です。
| レベル | 目標・内容の目安 | 必要な勉強時間 (目安) |
| N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解できる(高度な文法・抽象的トピック) | 900 ~ 1200時間 |
| N2 | 日常的な場面に加え、幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる | 600 ~ 900時間 |
| N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる | 450 ~ 600時間 |
| N4 | 基本的な日本語を理解できる(身近なトピック・ゆっくりした会話) | 300 ~ 450時間 |
| N5 | 基本的な日本語をある程度理解できる(ひらがな・カタカナ・定型文) | 150 ~ 200時間 |
N1は最も難易度が高く、幅広い場面で使われる日本語を理解できるレベルです。新聞の論説や評論など、論理的にやや複雑な文章を読んで理解でき、自然なスピードで話される会話やニュースを聞いて、話の流れや内容を詳細に理解できます。
N2は日常的な場面で使われる日本語に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルです。新聞や雑誌の記事を読んで理解でき、自然に近いスピードの会話やニュースを聞いて、話の流れや要旨を把握できます。多くの企業が外国人社員に求める最低限の日本語能力がこのレベルです。
N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベル、N4は基本的な日本語を理解できるレベル、N5は最も基礎的なレベルで、ひらがなやカタカナ、基本的な漢字で書かれた文章を読んで理解できる水準です。
参照:日本語能力試験 JLPT
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
日本語能力試験以外にも、国際交流基金が実施する「国際交流基金日本語基礎テスト」があります。主に特定技能の在留資格取得を目指す方向けに開発され、A2レベル相当の日本語能力を測定します。 JFT-Basicは日本語能力試験N4レベルと同等とされ、コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式で実施されます。より多くの国や地域で受験できる体制が整えられており、特定技能制度における日本語要件を満たすための選択肢となっています。
在留資格審査における証明方法
出入国在留管理局での在留資格審査において、外国人が審査官と面接する機会はありません。そのため、主観的に日本語が堪能であることを伝えても評価されず、客観的な証明が必須です。 日本語学校の成績表や日本語能力試験の合格証明書など、公的な書類の提出が求められます。在留資格を申請する際には、事前に適切な日本語試験を受験し、合格証明書を準備しておくことが重要です。
各在留資格における日本語要件
特定技能1号の基本的な日本語要件
特定技能制度とは、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野(建設業や外食産業)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度で2019年4月に新設されました。特定技能には、「1号」の在留資格と「2号」の在留資格があり、2号の在留資格は1号の在留資格よりも、専門的な技能が必要です。
特定技能制度では明確な日本語能力要件が定められています。特定技能1号の取得には日本語能力試験N4以上の合格または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で一定のスコアを取得する必要があります。N4は基本的な日本語を理解できるレベルで日常生活の身近な話題の文章を読んで理解でき、ややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できることが求められます。
特定技能介護分野の追加要件
特定技能には分野別に技能試験が設けられており日本語試験とは別に合格が必要です。特に介護分野では一般的な日本語試験に加えて「介護日本語評価試験」への合格も必須となっています。介護日本語評価試験は介護現場で使用される専門用語や利用者への声かけ、介護記録の作成など介護業務に必要な日本語能力を測定します。
技能実習からの移行と例外規定
技能実習2号を良好に修了している外国人が特定技能1号を申請する場合日本語試験と技能試験が免除されます。
| 分野 | 試験名称 |
| 全分野共通 | 国際交流基金日本語基礎テスト (JFT-Basic)もしくは、日本語能力試験 (JLPT) N4以上のどちらかの合格が必要です。 |
| 介護 | 国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験(N4以上)どちらかの合格に加え、介護日本語評価試験の合格が必要です。 |
経営・管理の2025年改正
在留資格「経営・管理」とは、日本で会社経営を行う場合や、既存企業の役員に就任する場合などの場合に必要な在留資格です。2025年10月16日に大きな制度改正が実施されました。改正により資本金の増加や、学歴・職歴要件、日本語能力要件などが新たに追加されています。日本語要件は申請者本人または常勤職員のいずれかが日本語教育の参照枠B2レベル以上(N2相当)の日本語力を持つことが求められます。具体的には以下のいずれかに該当することが必要です。
日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること
BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得していること –
中長期在留者として20年以上我が国に在留していること –
日本の大学等高等教育機関を卒業していること
日本の義務教育を修了し高等学校を卒業していること
これは実体のある経営を重視し日本国内で実際に事業活動を行える体制を確保するための措置です。2025年10月16日以前に在留資格を取得して在留している方や、申請した方は3年間は改正前の許可基準を適用して在留資格の更新が可能です。ただし、その3年間で新基準に該当するように日本語要件を満たす計画を行う必要があります。
育成就労(新制度)の段階的要件
技能実習制度に代わる新たな制度として「育成就労」が創設されました。技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました。育成就労制度は2027年(令和9年)4月1日から制度が開始されます。
この制度では段階的な日本語能力の向上が求められています。入国時にN5合格(A1相当)またはそれに相当する日本語講習受講が必要です。 また、特定技能移行時にN4以上(A2相当)合格が必須です。
高度専門職:ポイント加算制度
在留資格「高度専門職1号」は、我が国の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人の受入れをより一層促進するため、他の一般的な就労資格よりも活動制限を緩和した在留資格として設けられたものです。
「高度専門職1号」の在留資格は、高度人材ポイント制において、学歴・ 職歴・年収等の項目毎にポイントを付け、その合計が一定点数以上に達した人に許可されます。
高度専門職では、日本語能力が直接的な必須要件ではありませんが、ポイント加算の対象となります:
- N1合格:15点加算
- N2合格:10点加算
高度専門職のポイント制では、70点以上で永住権申請の短縮などの優遇措置が受けられるため、日本語能力の証明は大きなメリットとなります。
特定活動46号の最高水準要件
特定活動46号は日本の大学または大学院を卒業した留学生が対象で非常に高い日本語能力が要求されます。具体的には日本語能力試験N1の合格または又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証が必須要件です。N1は日本語能力試験の最高レベルで幅広い場面で使われる日本語を理解できることを示します。この在留資格を取得できればこれまで就労が認められていなかった業種(販売接客など)でも日本語能力を活かした業務に従事できます。
永住申請の要件厳格化
2026年現在、日本政府は外国人政策の新方針として、永住権の要件を厳格化する方向で調整を進めています。日本語要件を明確化(JLPT等のスコア提出など)する動きがあります。現時点ではどの程度の日本語能力が必要かどうかは不明ですがいきなりN1レベルが必要になることは考えにくいです。帰化申請と同等レベル(N3)が必要になるかと予想します。永住を考えているで現行の要件を満たす方は、改正前に申請する手もあります。
帰化申請の日本語レベル
帰化申請とは、外国の国籍から日本の国籍を取得することです。5年以上の居住要件や、法令違反をしていないなどの素行要件があります。帰化申請には「法律上の明確な試験合格義務」はありませんが、実務上はN3程度の「小学校3年生程度」の読み書き・会話能力が必須とされています。申請時には、在留資格とは違い日本語での面接があり、日本語能力が備わっていないと、不許可になる場合があります。
行政書士に依頼するメリット
査証や在留資格の手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、行政書士などの専門家に依頼することで以下のようなメリットがあります。
書類作成と「取次申請」による負担軽減: 特に中長期滞在の場合、日本の出入国在留管理局への申請が必要になります。申請取次ができる行政書士は、ご本人や企業担当者に代わって入管へ足を運び、手続きを行うことができます。これにより、多忙な業務や準備の時間を大幅に節約できます。
複雑な書類作成のサポート:在留資格の申請には、多数の書類が必要です。申請理由書、事業計画書、財務書類など、専門的な知識がなければ適切に作成することが難しい書類も含まれます。行政書士は、これらの書類を法律に基づいて正確に作成し、審査で有利になるようなポイントを押さえた説得力のある書類を準備します。不許可のリスクを最小限に抑えることができます。
許認可・永住許可・帰化申請なども相談可能: 行政書士は在留資格「経営・管理」会社設立や許認可申請や、「永住者」、「帰化申請」の業務も可能なので、日本での生活を長期的にサポート可能です。日本での生活を長期的にサポートできる専門家として、ライフステージに応じた様々な相談に対応可能です。例えば、最初は就労ビザで来日し、その後会社を設立して経営者となり、最終的に永住許可を取得するといった長期的なキャリアプランをサポートすることができます。
最新の法改正や手数料改定への迅速な対応: 出入国管理及び難民認定法は、社会情勢に応じて頻繁に改正されます。また、現在、日本政府は入管手数料の大幅な引き上げを検討しており、2026年度以降はコスト面でも大きな変化が予想されます。専門家に相談することで、常に最新の情報に基づいた最適なスケジュールと戦略を提案いたします。法改正の影響を最小限に抑え、スムーズな手続きを実現できます。
不許可時のリカバリー支援:万が一、申請が不許可となった場合でも、行政書士は不許可の理由を分析し、再申請の戦略を立てることができます。多くの場合、不許可の原因は書類の不備や説明不足であり、これらを改善することで再申請が成功することがあります。
まとめ:計画的な日本語能力の習得を
在留資格の種類によって求められる日本語能力は大きく異なります。各在留資格、帰化申請で必要な日本語要件は以下の通りになります。
| 在留資格 | 日本語レベルの要件 | 政府・省令による具体的な基準と背景 |
| 特定技能(バス・タクシー) | N3 以上 (必須) | 旅客輸送分野。乗客との意思疎通や安全確保のため、他分野より高いN3以上が必須。 |
| 特定技能(トラック) | N4 以上 (必須) | 自動車運送業(貨物)。通常の特定技能と同様にN4以上(またはJFT-Basic)で可。 |
| 特定技能1号(一般分野) | N4 以上 (必須) | 外食、建設、農業など。N4以上またはJFT-Basic A2合格が必須。 |
| 経営・管理 | N2 以上 (必須) | 2025年10月16日施行の新基準。 申請者本人または常勤職員がCEFR B2(JLPT N2)相当以上であることが必須要件化。従業員の場合は日本人の雇用でも可能。 |
| 育成就労 | N5 〜 N4 (必須) | 入国時: N5合格または講習受講。特定技能移行時: N4以上(A2相当)合格が必須条件。 |
| 高度専門職 | N1 or N2 (加点) | N1合格で15点、N2合格で10点の加点。永住権申請までの期間短縮に直結。 |
| 特定活動46号 | N1 (必須) | 日本の大学・大学院卒業者に限る。高い日本語能力を前提に、幅広い業務が認められる資格。 |
| 技術・人文知識・国際業務 | N2(目安) | 法律上の試験義務はないが、実務上の必要性から企業側がN2以上を求めるケースがあります。 |
| 永住申請 | 要確認(厳格化中) | 法律上の明確な級位規定はないが、公的義務(納税等)の理解や適応力としてN3程度の能力が審査に影響する傾向。 |
| 帰化申請 | N4〜N3(目安) | 明文規定はないが、法務局での面接や自筆の動機書が必要なため、小学校3年生程度の能力が実質必須。 |
特定技能制度ではN4レベル以上経営・管理ではN2レベル特定活動46号ではN1レベルとそれぞれに明確な基準があります。目標とする在留資格に必要な日本語レベルを早期に確認し計画的に学習を進めることが重要です。
企業が外国人材を採用する際も業務内容と求められる日本語能力のバランスを考慮し適切な在留資格を選択する必要があります。出入国在留管理庁の公式サイトでは各在留資格の詳細な要件が公開されていますので申請前に必ず最新の情報を確認しましょう。
日本語能力試験は年に2回の実施が一般的で受験から結果通知までに数ヶ月を要します。余裕を持って準備を進め確実な在留資格取得を目指してください。

