起業を考えている方にとって、株式会社の設立は大きな一歩です。しかし、「手続きが複雑そう」「費用がどれくらいかかるのか不安」という声も多く聞かれます。本記事では、大阪の行政書士事務所で実際に多くの会社設立をサポートしてきた経験をもとに、株式会社設立の全プロセスを分かりやすく解説します。法務省の公式情報に基づいた正確な内容で、これから起業される方の不安を解消します。

株式会社設立の簡単な流れ
基本的な株式会社設立の流れです。登記完了までは1か月半から2か月ほどの時間を要します。
①会社の概要を決める
↓
②会社の実印の作成
↓
③定款の作成、認証
↓
④出資金の払い込み
↓
⑤登記申請書類を作成し、法務局で申請
↓
⑥登記完了後の手続き
①会社の概要を決める
商号の選定
商号とは会社の正式名称のことです。株式会社の場合、商号の中に必ず「株式会社」という文字を入れる必要があります。前株(例:株式会社○○商事)でも後株(例:○○商事株式会社)でも構いません。
商号を決定する前に必ず行うべきなのが、類似商号の調査です。同じ住所に同じ商号の会社が既に存在する場合は登記ができません。また、有名企業と類似した商号を使用すると、不正競争防止法違反や商標権侵害で損害賠償請求を受けるリスクがあります。
法務局の「オンライン登記情報検索サービス」を利用すれば、無料で商号の検索が可能です。事前にしっかりと調査を行い、独自性のある商号を選びましょう。また、将来の事業展開を見据えて、ドメイン名の取得可能性も同時に確認しておくことをおすすめします。
所在地の設定と注意点
本店所在地は、会社の法律上の住所となる場所です。選択肢としては、自宅、賃貸事務所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなどがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、事業内容に合わせて慎重に選択する必要があります。
特に注意が必要なのは、許認可事業を行う場合です。例えば古物商許可や宅地建物取引業免許を取得する場合、バーチャルオフィスでは許可が下りないことがあります。建設業許可の場合も、実体のある事務所が必要とされます。
また、本店所在地によって管轄する法務局が決まります。登記申請は必ず本店所在地を管轄する法務局で行う必要がありますので、事前に法務局のウェブサイトで管轄区域を確認しておきましょう。
資本金額の設定
資本金とは設立の際の資金です。現在、株式会社は資本金1円から設立できます。しかし、実際には事業の信用度や許認可の要件を考慮して、適切な金額を設定する必要があります。一般建設業の許可は資本金500万円以上が必要など許認可要件を確認が必要です。また株主の構成は、1株1万にすることが多いです。
一方で、資本金が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税の課税事業者となる点にも注意が必要です。事業計画と将来の資金需要を踏まえて、適切な資本金額を設定しましょう。創業融資の申請を考えている場合は、自己資金の額とのバランスも重要なポイントとなります。
事業年度の決め方
決算をするために設けた一定期間です。自由に設定可能ですが年1回に設定している会社がほとんどです。3月末決算である必要はなく法人の場合は自由に設定が可能なので、事業の繁忙期を避けたり、顧問税理士を相談してきめる方法があります。
事業目的|許認可申請の場合は注意
会社が営む予定の事業です。現在だけでなく、将来行う予定のある事業内容も含めて設定します。注意点としては、許認可が必要な事業はその目的の記載が必要です。
記載が必要な許認可が必要な業種の例
| 業種 | 目的の記載例 |
| 飲食店営業許可 | 「レストラン」「飲食店の経営」 |
| 建設業許可 | 「建築工事業」「とび・土エ工事業」 |
| 古物商許可 | 「古物営業法に基づく古物商」 |
| 産業廃棄物処分業・収集運搬業 | 「産業廃棄物の収集運搬及び処理」 |
| 宅建業免許 | 「宅地建物取引業及び不動産売買業」 |
| 旅行業許可 | 「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」 |
| 介護事業(訪問介護等) | 「介護保険法に基づく居宅サービス事業」 |
| 労働者派遣事業 | 「労働者派遣事業」 |
②会社の実印を作成する
一般的に会社代表者印(実印)、銀行員、角印の3つを作成します。
①会社代表者印
実印にあたるもので、重要な契約書や取引、届出などに使用します。
会社設立の際に法務局に申請が必要です。
②銀行員
法人口座の開設など、金融取引を行う際に必要な印鑑です。金融取引を行う際に必要な印鑑です。
③角印
認印にあたる印鑑です。請求書や領収書など日常的に使用する印鑑です。
③定款の作成から認証定款まで認証まで
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要な書類です。会社の基本的なルールを定めたもので、株式会社の場合は公証人による認証を受けて初めて効力が生じます。定款の作成と認証は、会社設立において最も重要なステップの一つです。
定款の記載事項:絶対的・相対的・任意的記載事項
定款には必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があります。これは会社法第27条で定められており、①目的、②商号、③本店の所在地、④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、⑤発起人の氏名または名称および住所の5つです。これらの記載がない定款は無効となりますので注意が必要です。
次に「相対的記載事項」があります。これは定款に記載しなければ効力が生じない事項で、株式の譲渡制限に関する定めや取締役会・監査役を設置する旨などが該当します。特に株式の譲渡制限については、中小企業の多くが設定しており、株主構成を安定させる重要な規定となります。
最後に「任意的記載事項」は、会社が任意で定款に記載できる事項です。事業年度、株主総会の招集時期、役員の人数など、会社の運営に関する詳細なルールを定めることができます。ただし、法律に違反する内容は記載できませんので注意しましょう。
電子定款と書面定款の違いとメリット
定款には電子定款と書面定款の2種類があります。書面定款の場合、印紙税法により4万円分の収入印紙を貼付する必要があります。一方、電子定款であれば、この4万円の印紙税が不要となるため、コスト面で大きなメリットがあります。
電子定款を作成するには、PDFファイルに変換した定款に電子署名を付与する必要があります。電子署名にはマイナンバーカードの電子証明書を利用するのが一般的です。また、Adobe Acrobatなどの専用ソフトウェアと、ICカードリーダーも必要となります。
自分で電子定款を作成するのが難しい場合は、行政書士や司法書士に依頼することもできます。報酬は事務所によって異なりますが、印紙代4万円が不要になることを考えると、専門家に依頼した方がトータルコストを抑えられる場合も多くあります。
公証役場での定款認証手続きの流れ
定款を作成したら、本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人による認証を受ける必要があります。認証を受けずに登記申請をすることはできませんので、この手続きは必須です。(合同会社の場合は定款認証は不要です。)
まず、事前に公証役場に連絡を取り、定款の内容を確認してもらいます。メールやFAXで定款案を送付し、公証人に内容をチェックしてもらうことで、当日の手続きをスムーズに進めることができます。内容に問題がなければ、認証日を予約します。
認証当日は、発起人全員が公証役場に出向くのが原則ですが、代理人による認証も可能です。必要な書類は、①定款3通、②発起人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内)、③発起人の実印、④認証手数料、⑤委任状(代理人が行く場合)などです。認証後、登記申請用の定款謄本を受け取ります。
公証人手数料は、資本金の額によって異なります。2024年12月1日の改正により、資本金100万円未満で一定の条件を満たす場合は15,000円、資本金100万円未満(条件を満たさない場合)は30,000円、資本金100万円以上300万円未満は40,000円、資本金300万円以上は50,000円となっています。これに加えて、定款謄本の交付手数料が必要です。
④資本金の払い込み
資本金払込みのタイミングと方法
資本金の払込みは、定款認証後に行います。まだ会社は設立されていませんので、法人口座は開設できません。そのため、発起人の個人口座を使用して払込みを行います。通常は発起人の代表者の口座を使用することが多いです。
払込みの方法として重要なのは、必ず「振込み」または「入金」の形で行うことです。既に口座に残高がある場合でも、それをそのまま資本金とすることはできません。一度口座から出金してから、改めて発起人の名前で振り込む必要があります。
これは、通帳の記帳欄に「発起人の氏名」と「金額」が明確に記載されるようにするためです。登記申請時には、この通帳のコピーを添付して資本金の払込みを証明しますので、記録が残る形で手続きを行うことが重要です。
⑤登記申請書類を作成し、法務局で設立登記をする
登記申請書類の作成と必要書類一覧
本店の所在地を管轄する法務局に設立登記申請します。登記申請には多くの書類が必要です。主な書類は以下の通りです。①株式会社設立登記申請書、②定款(公証人の認証を受けたもの)、③発起人の同意書または発起人決定書、④設立時取締役の就任承諾書、⑤設立時代表取締役の就任承諾書、⑥設立時取締役の印鑑証明書、⑦資本金の払込みを証する書面、⑧印鑑届出書、⑨登記すべき事項を記載した書面またはCD-R。
特に重要なのが「資本金の払込みを証する書面」です。これは、払込みを受けた金融機関が発行する「払込金受入証明書」を使用する方法と、設立時代表取締役が作成する「払込みがあったことを証する書面」に通帳のコピーを添付する方法があります。現在は後者の方法が一般的です。
登記すべき事項については、書面で提出する方法とCD-Rなどの電磁的記録媒体で提出する方法があります。また、オンライン申請の場合は、電子データで送信することも可能です。記載内容に誤りがあると補正を求められますので、法務局のホームページにある記載例を参考に正確に作成しましょう。
⑥登記完了後の手続き
会社設立の登記が完了したら終わりではありません。税務署、都道府県税事務所、市区町村、社会保険関係機関など、さまざまな機関に届出を行う必要があります。
税務署・地方自治体への届出一覧
まず、税務署への届出です。会社設立後2か月以内に「法人設立届出書」を提出する必要があります。これは本店所在地を所轄する税務署に提出します。添付書類として、定款のコピー、登記事項証明書、株主名簿などが必要です。
青色申告の承認を受ける場合は、「青色申告の承認申請書」も提出します。この申請書は、設立第1期の場合は設立日から3か月を経過した日、または設立第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに提出する必要があります。青色申告には、欠損金の繰越控除などのメリットがあるため、ほとんどの法人が申請します。
給与を支払う場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」も必要です。これは給与を支払い始めた日から1か月以内に提出します。また、源泉所得税を年2回にまとめて納付する特例を受けたい場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出します。
次に、都道府県税事務所と市区町村への届出です。法人設立後、おおむね2週間から1か月以内に「法人設立届出書」を提出します。提出先や期限は自治体によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
社会保険・労働保険の加入手続き
株式会社を設立した場合、たとえ社長1人であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。会社設立から5日以内に、本店所在地を管轄する年金事務所で「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。
同時に、事業主(社長)自身と従業員がいる場合は、それぞれについて「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」も提出します。扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」も必要です。
従業員を1人でも雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入も必要です。労災保険は、会社設立後10日以内に労働基準監督署で「労働保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を提出します。
雇用保険は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、公共職業安定所(ハローワーク)で「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。ただし、役員は原則として雇用保険の対象外です。
法人口座開設と各種契約の準備
会社設立後の重要な手続きとして、法人口座の開設があります。近年、マネーロンダリング対策の強化により、法人口座の開設審査が厳しくなっています。登記事項証明書、印鑑証明書、会社の実印、代表者の本人確認書類などが必要です。
金融機関によっては、事業計画書や事業内容が分かる資料の提出を求められることもあります。また、バーチャルオフィスを本店所在地としている場合、口座開設を断られるケースも増えています。複数の金融機関に相談しておくことをおすすめします。
会社設立の費用の目安
公証人手数料:資本金100万円未満で発起人が3名以下、発起設立、取締役会非設置の全てを満たす場合は15,000円となりました。資本金100万円未満でこの条件を満たさない場合は30,000円、資本金100万円以上300万円未満の場合は40,000円、資本金300万円以上の場合は50,000円です。定款謄本の交付手数料として、1ページあたり250円程度が別途かかります。
収入印紙代:書面定款の場合は40,000円が必要ですが、電子定款の場合は不要となります。
登録免許税:株式会社設立の場合、資本金の額の1,000分の7(0.7%)または150,000円のいずれか高い方を納付します。
実印作成費:約10,000〜20,000円
約20万~25万費用がかかります。
この他にも印鑑証明書の取得費や、行政書士、司法書士に依頼した場合の報酬がかかります。
専門家への依頼費用と自分で行う場合の比較
会社設立手続きを行政書士や司法書士に依頼する場合、報酬が発生します。一般的な相場は、行政書士で30,000円から50,000円程度、司法書士で50,000円から100,000円程度です。
行政書士は主に定款作成と認証手続きを行います。電子定款に対応している事務所であれば、印紙代40,000円が不要になるため、実質的な負担は少なくなります。司法書士は登記申請まで一貫して代行できるため、複雑な手続きを任せたい場合に適しています。
まとめ
今回は株式会社設立の際の簡単な流れと費用を説明しました。
特に初めて会社を設立する方は、書類の作成から各種届出まで、分からないことも多いはずです。専門家のサポートを受けることで、手続きをスムーズに進められるだけでなく、設立後の事業運営についてもアドバイスを受けられます。
大阪で会社設立をお考えの方は、当事務所でもご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。あなたの起業が成功することを心よりお祈りしています。

