在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは、外国人が専門的な知識・技術を使って日本で働くための就労ビザです。
技術・人文知識・国際業務の先頭の漢字を取って、「技人国」と言われることもあります。
この「技人国」における契約形態は、直接雇用に限らず、委任、委託、あるいは派遣就労であっても認められます。日本で安定した生活を営むに足りる報酬を得られるのであれば、資格該当性が認められる可能性があります。
これまでは、派遣就労でも比較的柔軟に認められてきました。しかし、2月24日出入国在留管理庁から発表された最新指針により、令和8年(2026年)3月9日申請分から運用が変わります 。提出書類が揃っていない場合、大幅に審査が遅れたり、不利益処分となり得る可能性があるので、派遣で就業するなら、知っておきたい変更のポイントをまとめました。

技術・人文知識・国際業務ビザとは?基礎知識を完全理解
まずは「技人国」ビザの基本知識を押さえておきましょう。
技人国ビザの定義と対象業務
在留資格「技人国」とは、申請人の学歴や職歴を活かして、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学の分野、人文科学の分野、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務を行う就労ビザです。
- 技術分野:理学、工学などの自然科学分野に属する技術・知識を要する業務(システムエンジニア、機械設計技術者、建築士など)
- 人文知識分野:法律学、経済学、社会学などの人文科学分野に属する知識を要する業務(マーケティング担当者、経理、総務、人事など)
- 国際業務分野:外国の文化を基盤とする思考や感受性を必要とする業務(通訳、翻訳、語学教師、海外取引業務など)
在留期間は5年、3年、1年、または3月のいずれかが許可されます。
技人国ビザで「できる仕事」と「できない仕事」の明確な区別
技人国ビザは専門的な業務に限定されており、誰でもできる単純労働は認められていません。この区別を理解することが、申請成功の第一歩です。
許可される業務の具体例:
- 自動車メーカーでの設計、技術指導、品質管理、工程管理
- ソフトウェア開発エンジニア
- CAD・CAEのシステム解析
- 貿易業務における通訳・翻訳
- マーケティング支援業務
- 英会話講師
- 弁護士補助業務
許可されない業務の具体例:
- 自動車の部品交換などの現場作業
- 飲食店での接客や調理
- 小売店の店頭販売
- 工場の製造ラインでの組立作業
- 倉庫での梱包・ピッキング作業
- 建設現場での単純な肉体労働
重要なポイントは、学歴・職歴と仕事内容の「関連性」が必須であることです。たとえば、情報工学を専攻した大学卒業者がプログラマーとして働く場合は問題ありませんが、同じ学歴で飲食店の接客業務に従事することは認められません。
在留期間と更新の仕組み
技人国ビザの在留期間は、申請者の状況や企業の信頼性に応じて決定されます。初回申請では通常1年が許可されることが多く、その後の更新で3年、5年と延長されることが一般的です。
在留期間の更新は、期間満了前に申請が必要です。更新申請では、引き続き同じ業務を行うことの証明や、納税状況の確認などが行われます。転職した場合は、新しい勤務先での業務内容が技人国の要件を満たしているかが厳しく審査されます。
「技人国」の申請要件とは
学歴要件:大学卒業が基本、日本の専門学校卒業も条件付きで可能
技人国ビザを取得するための最も基本的な要件が学歴です。申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、その技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたことが必要です。海外の専門学校の卒業はこの学歴要件は満たすことにはなりませんが、日本の専門学校の専門課程を修了し、専門士または高度専門士の称号を付与されている場合は要件を満たします。
重要な注意点として、日本の専門学校卒業者の場合、学んだ分野と従事する業務の間に明確な関連性が求められます。たとえば、国際情報ビジネス科を卒業した方が、IT関連の業務に従事する場合は認められますが、全く無関係な分野での就労は認められません。
実務経験要件:学歴がない場合の代替条件
大学や専門学校を卒業していない場合でも、実務経験によって要件を満たすことができます。
技術・人文知識分野の場合:
- 従事しようとする業務に関連する実務経験が10年以上あること
- この10年には、大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程、専修学校の専門課程で関連科目を専攻した期間も含めることができます
国際業務分野の場合:
- 従事しようとする業務(翻訳、通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザインなど)について3年以上の実務経験があること
- ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳、語学指導に従事する場合は、実務経験不要です。
IT技術者の特例: 情報処理業務に従事する場合、法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験に合格、または資格を有している場合は、学歴・実務経験要件が免除されます。
報酬要件:日本人と同等以上の給与が必須
技人国ビザでは、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが求められます。
この「報酬」には、基本給のほか、職務手当、役職手当などが含まれますが、通勤手当、扶養手当、住宅手当などの実費弁償的な性格を持つもの(課税対象となるものを除く)は含まれません。
実際の審査では、同じ企業で同様の業務に従事する日本人社員の給与と比較されます。たとえば、月額13.5万円で採用された外国人エンジニアに対し、同種の業務を行う日本人の報酬が月額18万円である場合、「日本人と同等額以上」とは認められず、不許可となった事例があります。
「技人国」は派遣就労は可能?
「技人国」の在留資格で派遣就労することは可能です。
特定の会社との雇用契約だけでなく、派遣契約や業務委託といった形態での就労が認められています。
ただし、派遣就労の場合は通常の直接雇用(正社員など)よりも審査が厳しくチェックされる傾向にあります。主なポイントは以下の通りです。
派遣就労で認められるための主な条件
- 業務内容の専門性 派遣先での仕事内容が、単純労働(工場のライン作業、レジ打ち、清掃など)ではなく、学術的な知識や専門スキルを必要とする「技人国」の対象業務である必要があります。
- 派遣元の信頼性 雇用主となる派遣会社が「労働者派遣事業」の許可を適切に受けており、社会保険への加入など法令を遵守していることが重要です。
- 継続性の証明 派遣契約が極端に短期間ではないこと。契約更新の見込みがあるなど、継続して日本で活動できることを証明する必要があります。
派遣就労の場合は派遣元ではなく、派遣先において従事する業務内容が「技人国」に該当する業務でないといけません。
「登録型派遣」と「常用型派遣」
派遣就労には、「登録型派遣」と「常用型派遣」の2種類があります。
「常用型派遣」… 派遣先の有無にかかわらず、派遣元に常用雇用されている場合
「登録型派遣」… 派遣労働を希望する労働者があらかじめ派遣元事業主に登録しておき、派遣先が存在する場合のみ、一定の期間を定めて派遣労働者を雇用する場合
在留資格の該当性審査では、日本で継続的に活動できるかどうかが重要な判断材料となります。そのため、派遣就労の場合は「常用型派遣」であることが望ましいとされています。一方で「登録型派遣」であっても、派遣先での業務内容が資格要件を満たし、かつ安定的な就労が見込まれる場合には、資格該当性が認められます。
派遣就労の場合の令和8年3月からの変更点
派遣形態で就労する場合、令和8年3月9日(月)からの申請については、いくつかの変更点があります。
①提出書類の追加
今回の変更に伴い、以下の書類を準備する必要があります。
- 申請人の派遣労働に関する誓約書 派遣元と派遣先の双方が、虚偽の報告をしていないこと、在留資格該当性を満たす仕事をさせる、と誓約する書類です 。


参照:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 | 出入国在留管理庁
- 労働条件通知書(雇用契約書)・労働者派遣個別契約書の写し 具体的な業務内容や期間を証明するために、個別契約書の提出が必須となります 。
- 派遣元管理台帳・派遣先管理台帳・就業状況報告書 在留資格更新時に必要な書類です。適切に管理・就労されていた実績を示す資料が求められます 。
申請時に派遣先の確定が必須
申請時点において派遣先が確定していない場合は、在留諸申請の不許可になります。「先にビザを取ってから仕事を探す」という進め方はできません。必ず派遣先を確定させた上で申請してください。
派遣契約期間に応じた在留期間の決定
派遣契約期間に応じた在留期間が決定されます。派遣先との契約が短い場合、申請しても短い在留期間しか付与されない可能性があります。
業務内容や活動状況の直接確認
在留審査の際に、派遣元のほか、派遣先に対しても申請人の業務内容や活動状況について直接確認を行う場合があります。「技人国」にふさわしい専門的な仕事をしているかどうか、現場の実態がより厳しくチェックされることになります 。
運用の背景とは
「技人国」ビザで派遣形態で働く際の活動の実態をより正確に把握し、適正な運用を徹底するという狙いがあります。具体的には、以下のような状況に対応するための措置と考えられます。
- 就労実態の不透明さを解消するため
派遣就労の場合、雇用主(派遣元)と実際に働く場所(派遣先)が異なるため、入管当局が「外国人が本当に許可された専門的な仕事をしているか」を把握しにくい側面がありました。今後は、申請時に必ず派遣先を確定させ 、派遣元・派遣先の双方が業務内容について誓約書を提出することで、実態との乖離を防ごうとしています 。
- 現場での適正な就労を確保するため
「技人国」の資格を持ちながら、実際には単純労働に従事させるといった不正を防ぐ狙いがあります。審査の際、派遣元だけでなく派遣先に対しても直接、業務内容や活動状況の確認を行う場合があると明記されました 。これにより、派遣先企業にも受け入れ責任を自覚させる仕組みになっています。
- 安定した雇用継続の確認
在留期間を「派遣契約期間」に応じて決定する運用にすることで 、派遣期間が終了した後の空白期間(無職状態)が生じないか、安定した生活を送るに足りる報酬が継続的に得られるかをより厳密に審査する方針です。
申請手続きの流れと審査期間|スムーズな取得のために
申請から許可までのステップ
技人国ビザの申請手続きは、以下の流れで進みます。
ステップ1:必要書類の準備 自社がどのカテゴリーに該当するかを確認し、必要な書類を揃えます。証明書類は発行から3か月以内のものが必要です。
ステップ2:申請書の作成 出入国在留管理庁のウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。
ステップ3:地方出入国在留管理局への提出 申請書類一式を、管轄の地方出入国在留管理局に提出します。申請は、本人のほか、企業の人事担当者、行政書士などの申請取次者も可能です。
ステップ4:審査 提出書類をもとに審査が行われます。追加書類の提出を求められることもあります。
ステップ5:結果通知 許可された場合、在留資格認定証明書の交付または在留カードの交付・更新が行われます。
審査期間の目安と待ち時間の実態
審査期間は申請の種類や時期、提出書類の完全性によって大きく異なります。
一般的な目安:
在留資格認定証明書交付申請:1~3か月
在留資格変更許可申請:2週間~2か月
在留期間更新許可申請:2週間~1か月
ただし、これはあくまで目安です。書類が不足している場合や内容に疑義がある場合、追加書類の提出を求められ、審査が大幅に遅れることがあります。
特に4月前後(留学生の卒業・就職シーズン)は申請が集中するため、通常より時間がかかる傾向があります。
行政書士に依頼するメリット
査証や在留資格の手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、行政書士などの専門家に依頼することで以下のようなメリットがあります。
最新の法改正や手数料改定への迅速な対応: 出入国管理及び難民認定法は、社会情勢に応じて頻繁に改正されます。今回のように2月24日発表、3月9日から変更とかなりタイトなスケジュールです。専門家に相談することで、常に最新の情報に基づいた最適なスケジュールと戦略を提案いたします。法改正の影響を最小限に抑え、スムーズな手続きを実現できます。
書類作成と「取次申請」による負担軽減: 特に中長期滞在の場合、日本の出入国在留管理局への申請が必要になります。申請取次ができる行政書士は、ご本人や企業担当者に代わって入管へ足を運び、手続きを行うことができます。これにより、多忙な業務や準備の時間を大幅に節約できます。
複雑な書類作成のサポート:在留資格の申請には、多数の書類が必要です。申請理由書、事業計画書、財務書類など、専門的な知識がなければ適切に作成することが難しい書類も含まれます。行政書士は、これらの書類を法律に基づいて正確に作成し、審査で有利になるようなポイントを押さえた説得力のある書類を準備します。不許可のリスクを最小限に抑えることができます。
許認可・永住許可・帰化申請なども相談可能: 行政書士は在留資格「経営・管理」会社設立や許認可申請や、「永住者」、「帰化申請」の業務も可能なので、日本での生活を長期的にサポート可能です。日本での生活を長期的にサポートできる専門家として、ライフステージに応じた様々な相談に対応可能です。例えば、最初は就労ビザで来日し、その後会社を設立して経営者となり、最終的に永住許可を取得するといった長期的なキャリアプランをサポートすることができます。
不許可時のリカバリー支援:万が一、申請が不許可となった場合でも、行政書士は不許可の理由を分析し、再申請の戦略を立てることができます。多くの場合、不許可の原因は書類の不備や説明不足であり、これらを改善することで再申請が成功することがあります。
まとめ|技人国ビザ取得成功のための重要ポイント
派遣で「技人国」を取得するためには、派遣先を早めに確定させること、派遣先企業の署名などが不可欠です。
「技人国」では申請人の学歴や職歴を活かした業務を行うことが必要です。ライン作業、清掃、レジ打ちなどの単純作業は認められません。今回の誓約書には、内容が嘘だったり誓約に反したりした場合、その会社が関わる他の外国人の申請も許可されなくなる可能性があるという非常に厳しい注意書きがあります 。 会社側にとっても、これまで以上に責任が重くなる改正といえます。
「自分は技人国ビザの要件を満たしている?」「会社で外国人を雇用したいが手続きがわからない」「留学から就労ビザに切り替えたい」など、少しでも疑問や不安なことがあれば、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

ℳ/大阪の行政書士補助者
2023年行政書士試験合格
大阪市内事務所に勤務している行政書士補助者です。
取扱業務:在留資格、古物商、宅建業、会社設立
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