結核は、結核菌によって引き起こされる感染症で、日本国内では年間1,500人の方が亡くなっています。また、日本において外国生まれの結核患者数が増加傾向にあり、新登録結核患者のうち外国生まれの患者数の割合は16%となっています。(2023年時点)
そのため現在、特に日本における結核患者数が多い国から日本に渡航して中長期間在留しようとする者に対して、入国前結核スクリーニング(Japan Pre-Entry Tuberculosis (TB) Screening)を開始することとしました。
2025年から段階的に導入されているこの制度は、適切に対応しないと在留資格(COE)やビザの申請が却下される原因にもなりかねません。
この記事では、入国前結核スクリーニング制度の概要から具体的な検査の流れ、注意点まで、理解できるよう分かりやすく解説します。

なぜ「入国前結核健診」が必要なのか?対象者と背景を徹底解説
日本の入国管理制度が厳格化された背景には、公衆衛生を守るという重要な目的があります。
制度導入の背景と日本政府の目的
結核は、結核菌によって引き起こされる感染症です。結核菌が肺の中で増殖し、発症するとせき、発熱、体のだるさなど、風邪のような症状が現れ2週間以上長く続くのが特徴です。さらに重症になると血を吐いたり、呼吸困難に陥ったりします。現在、日本国内では毎年約10,000人が結核を発症し、約1,500人が亡くなっています。近年、特に結核の発症率が高い国で生まれた方が、日本滞在中に発症するケースが増えていることが問題視されています。 そこで日本政府は、活動性結核(周りに感染させる恐れのある状態)のまま入国することを防ぐために、入国前のスクリーニングを義務化しました。
出入国管理及び難民認定法における日本上陸許可事由
出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)においては、二類感染症の患者であることを上陸拒否事由として定めています。
(上陸の拒否)
第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症(同法第四十四条の九の規定に基づき、政令で定めるところにより、同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者(同法第八条(同法第四十四条の九において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)又は新感染症の所見がある者
結核は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律において、二類感染症に規定されています。よって、結核の患者である外国人は本邦への上陸は原則として認められません。
入管法第5条(上陸拒否事由)
| 項目(号) | 内容の要約 |
| 第1号 | 感染症(一類・二類・新型インフル等)の患者、または新感染症の所見がある者。 |
| 第2号 | 精神障害により判断能力が不十分で、介助者が同伴しない者。 |
| 第3号 | 貧困者や放浪者で、生活上で国や自治体の負担になるおそれがある者。 |
| 第4号 | 日本または外国の法令で、1年以上の懲役・禁錮に処せられた者(政治犯を除く)。 |
| 第5号 | 麻薬、大麻、覚醒剤等の取締法違反で、刑に処せられたことがある者。 |
| 第6号 | 麻薬、覚醒剤、あへん等の薬物、または吸食器具を不法に所持する者。 |
| 第7号 | 売春やその周旋・勧誘などに直接関係する業務に従事したことがある者。 |
| 第7号の2 | 人身取引(トラフィッキング)等を行い、またはこれを助けた者。 |
| 第8号 | 銃砲、刀剣類、または火薬類を不法に所持する者。 |
| 第9号 | 過去に強制退去や出国命令を受けた者で、一定期間(1年・5年・10年)を経過していない者。 |
| 第9号の2 | 在留中に特定の罪(窃盗・暴行等)で判決を受け、出国後に確定してから5年を経過しない者。 |
| 第10号 | 破壊活動やテロに関連して強制退去処分を受けたことがある者。 |
| 第11号 | 日本政府を暴力で破壊することを主張する、またはその団体に加入する者。 |
| 第12号 | 公務員への暴行や公共施設の破壊、争議妨害を勧奨する団体に属する者。 |
| 第13号 | 第11号・12号の目的を達するための文書や映画を作成・配布しようとする者。 |
| 第14号 | その他、日本の利益や公安を害するおそれがあると法務大臣が認める者。 |
対象となる6つの国と「中長期在留者」の定義
入国前結核スクリーニング制度の対象となるのは、日本で結核と診断された外国人の出生数が多い、以下の6か国の国籍を持つ方です。
1. フィリピン
2. ベトナム
3. インドネシア
4. ネパール
5. ミャンマー
6. 中国
これらの国籍を持ち、「中長期在留者」(3カ月を超えて日本に滞在する方、就労ビザ、留学ビザ、家族滞在ビザなど)と並びに特定活動告示第53号及び54号(デジタルノマド及びその配偶者又は子)して入国しようとする方が対象です。短期滞在ビザでの入国者の方は対象外です。
居住国の滞在許可証等により、現在の居住地が対象国以外の国又は地域であることが確認された場合は、本スクリーニングの対象外となります。
また、入国前に結核検査を目的とした胸部レントゲンを含む健康診断が課されている下記の制度で入国予定の方は本スクリーニングの対象外です。
JETプログラム参加者、JICA研修員(長期・短期)、JICA人材育成奨学計画(JDS)留学生、大使館推薦による国費留学生、外国人留学生の教育訓練の受託事業、当該国とのEPAに基づく看護師・介護福祉士、特定技能外国人、特定活動告示第55号(特定自動車運送業準備)、家事支援外国人材受入事業(特区法第16条の4)
各国での開始スケジュールと義務化のタイミング
この制度は国ごとに順次開始されます。現在決まっている予定は以下の通りです。
• フィリピン・ネパール: 2025年3月24日から健診受付開始、6月23日から証明書の提出が義務化。
• ベトナム: 2025年5月26日から健診受付開始、9月1日から証明書の提出が義務化。
• インドネシア・ミャンマー・中国:この3か国については、現在調整中であり、開始時期は未定です。開始の目途が立ち次第、厚労省ホームページにおいてお知らせさせるので最新の情報をご確認ください。
| 対象国 | スクリーニング受付開始 | 提出義務付け開始 |
| フィリピン・ネパール | 令和7年(2025年)3月24日予定 | 令和7年(2025年)6月23日予定 |
| ベトナム | 令和7年(2025年)5月26日予定 | 令和7年(2025年)9月1日予定 |
| インドネシア・ミャンマー・中国 | 開始に向け調整中 |
入国前結核スクリーニングの方法は?
入国前結核スクリーニングの流れ

参照:入国前結核スクリーニング Japan Pre-Entry Tuberculosis Screening |厚生労働省
1 申請者は対象国にある指定健診医療機関で、医師の診察及び胸部レントゲン検査等を受けます。
2 当該検査で結核を発病していないと判断された方には、指定健診医療機関から結核非発病証明書が発行されます。
3 在留資格認定証明書交付申請時に結核非発病証明書を提出します。
※ 結核を発病していると診断された方については、治療完了後、再度指定健診医療機関で結核検査を受診する必要があります。
① 指定医療機関での検査の流れ
この健診は、日本政府が指定した指定健診医療機関での受診が必須です。指定健診医療機関は、厚生労働省のHPから確認可能です。指定健診医療機関以外の医療機関が発行する結核非発病証明書を提出することは認められません。
② 健診の基本ステップ(問診・身体検査・胸部レントゲン)
健診は、以下のステップで進みます。
1. 本人確認: パスポートを提示し、厳格な身元確認が行われます。
2. 問診・身体検査: 咳や痰、発熱などの症状がないか、過去に結核患者と接触がなかったかなどを医師が詳しく確認します。
3. 胸部レントゲン検査: 肺の状態を画像で確認します。15歳以上の方は必須です。
• 5歳未満の小児: 原則としてレントゲンではなく、ツベルクリン反応(TST)や血液検査(IGRA)が行われます。
• 妊婦: 胎児への影響を考え、出産後に延期するか、特別な防護(鉛シールド)を使用した上でレントゲンを受けるかを選択できます。
• 治療歴がある方: 過去に結核になったことがあっても、現在治っていれば問題ありません。ただし、治療が終わったことを証明する書類が必要になる場合があります。
③ 結核非発病証明書の発行
無事に健診をクリアすると、「結核非発病証明書」が発行されます。スクリーニングを受けてから「結核非発病証明書」が発行されるまでに要する日数・費用は医療機関によって異なります。
結核非発病証明書の有効期限は180日です。ただし、① 申請者の同居者に、胸部レントゲン検査日から遡って 2 か月以内に感染性の活動性肺結核と診断された者がいる場合と、②胸部レントゲン検査日から 2か月以内に感染性の活動性肺結核と診断された者と、密閉された同じ空間、住居、その他の囲まれた環境を長期間(数日間以上)共有していた者に関しては、リスクを考慮して有効期間が90日になります。
結核非発病証明書は基本的には、日本でのCOE(在留資格認定証明書)を申請するタイミングで提出します。 もし、COE申請時にやむを得ない事情で提出できなかった場合でも、例外的に査証(ビザ)申請時に在外公館(日本大使館など)へ提出することが認められるケースもありますが、原則は提出がないとCOEは交付されないと考え、事前に用意しておくのが最も安全です。
結核非発病証明書は入国後に提示を求められる場合があるため、結核非発病証明書の本人控えは保管する必要があります。
入国前結核スクリーニングの注意点
・健診費用はどのくらいなのか
この健診にかかる費用は、診察料、レントゲン代、証明書発行手数料を含め、すべて申請者の自己負担です。 費用は医療機関によって異なりますが、もし精密検査が必要になった場合、その追加費用も発生します。日本での仕事が決まっている場合などは、受け入れ先の企業と事前に費用の負担について相談しておくとスムーズです。
・結核が見つかったら?
もし健診で「活動性結核」と診断された場合、残念ながらその時点では証明書は発行されず、日本へ入国することもできません。 しかし、医師の指示に従って適切な治療を受け、完治した後に再度指定医療機関で健診を受ければ、証明書の発行が可能になります。その際は、治療が完了したことを示す「結核治療終了報告書」が必要になります。
・過去に結核と診断されたことがある場合は
過去に結核と診断されている場合であっても、結核の治療が完了しており、現在結核を発病していないことが指定健診医療機関において確認された場合は、結核非発病証明書が発行され、在留資格認定証明書交付申請、査証申請を行うことができます。
行政書士に依頼するメリット
査証や在留資格の手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、行政書士などの専門家に依頼することで以下のようなメリットがあります。
書類作成と「取次申請」による負担軽減: 特に中長期滞在の場合、日本の出入国在留管理局への申請が必要になります。申請取次ができる行政書士は、ご本人や企業担当者に代わって入管へ足を運び、手続きを行うことができます。これにより、多忙な業務や準備の時間を大幅に節約できます。
複雑な書類作成のサポート:在留資格の申請には、多数の書類が必要です。申請理由書、事業計画書、財務書類など、専門的な知識がなければ適切に作成することが難しい書類も含まれます。行政書士は、これらの書類を法律に基づいて正確に作成し、審査で有利になるようなポイントを押さえた説得力のある書類を準備します。不許可のリスクを最小限に抑えることができます。
許認可・永住許可・帰化申請なども相談可能: 行政書士は在留資格「経営・管理」会社設立や許認可申請や、「永住者」、「帰化申請」の業務も可能なので、日本での生活を長期的にサポート可能です。日本での生活を長期的にサポートできる専門家として、ライフステージに応じた様々な相談に対応可能です。例えば、最初は就労ビザで来日し、その後会社を設立して経営者となり、最終的に永住許可を取得するといった長期的なキャリアプランをサポートすることができます。
最新の法改正や手数料改定への迅速な対応: 出入国管理及び難民認定法は、社会情勢に応じて頻繁に改正されます。また、現在、日本政府は入管手数料の大幅な引き上げを検討しており、2026年度以降はコスト面でも大きな変化が予想されます。専門家に相談することで、常に最新の情報に基づいた最適なスケジュールと戦略を提案いたします。法改正の影響を最小限に抑え、スムーズな手続きを実現できます。
不許可時のリカバリー支援:万が一、申請が不許可となった場合でも、行政書士は不許可の理由を分析し、再申請の戦略を立てることができます。多くの場合、不許可の原因は書類の不備や説明不足であり、これらを改善することで再申請が成功することがあります。
まとめ:スムーズな来日のために、プロのサポートを検討しませんか?
「入国前結核健診」の対象国や、開始時期は下記の通りになります。
| 対象国 | スクリーニング受付開始 | 提出義務付け開始 |
| フィリピン・ネパール | 令和7年(2025年)3月24日予定 | 令和7年(2025年)6月23日予定 |
| ベトナム | 令和7年(2025年)5月26日予定 | 令和7年(2025年)9月1日予定 |
| インドネシア・ミャンマー・中国 | 開始に向け調整中 |
インドネシア・ミャンマー・中国の3か国は開始時期が未定ですので、入国前に必ず最新の情報をご確認ください。
当事務所では、JPETS制度に完全対応し、外国人の受け入れを行う企業様や、これから日本に来る皆様を全力でサポートしています。「会社で外国人を雇用したいが手続きがわからない」「海外にいる家族を日本に呼びたい」など、少しでも不安なことがあれば、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
お問い合わせは、下記のフォームにてお待ちしております。
(注:この記事は、令和6年12月26日および令和7年3月31日改正の政府ガイドライン、ならびに厚生労働省発行の「日本入国前結核健診の手引き」に基づいています。最新の情報については、必ず公式ホームページを確認するか、専門家にご相談ください。)

