大阪の行政書士事務所で勤務していますℳです。
近年、日本の人手不足が深刻化しています。また、これまでの技能実習制度では、「制度目的と実態の乖離」「外国人労働者の権利保護」などの課題が指摘されていました。
そのため、令和6年6月21日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
それにより、人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されます。
法改正の主な内容
国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消する。
人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設する。
育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせ、外国人が日本でキャリアアップできる制度の構築。
長期にわたり我が国の産業を支える人材を確保することを目指す。
育成就労制度の創設と特定技能制度の改正がスタートは2027年4月と予想されています。
育成就労制度の目的
「育成就労産業分野」において、日本での3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の技能を有する人材を育成することで、当該分野における人材を確保することです。
「育成就労産業分野」とは
特定技能制度の対象分野と原則一致する見込みです。(現段階では最終調整中)
特定技能制度「特定技能1号」の特定産業分野(16分野)
・介護
・ビルクリーニング
・工業製品製造業
・建設
・造船・舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・自動車運送業
・ 鉄道
・ 農業
・ 漁業
・飲食料品製造業
・外食業
・林業
・木材産業
また、2027年から特定技能の特定産業分野に、倉庫管理、廃棄物処理、リネン供給が追加され、合計で19分野になる見込みです。
育成就労においては、国内での育成になじまない分野の自動車運送業、航空を除外した17分野となる方向で検討が進められています。
育成就労制度と技能実習制度の違い
2027年から技能実習を発展的に解消して、育成就労という新しい制度がスタートします。
最大の違いとしては目的です。
技能実習制度日本での技能等の修得等を通じた人材育成により国際貢献を行うことが目的
育成就労制度日本の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的
また、技能実習では転籍(転職)は原則不可でしたが、育成就労では、本人意向による転籍を一定要件の下で認めます。
技能実習では日本語要件は原則不問でしたが、育成就労では就労開始前にある程度の日本語能力を身につけておかなければなりません。
育成就労制度から特定技能制度のステップイメージ
就労開始まで
「日本語能力試験(A1相当以上)」の合格もしくは、それに相当する日本語講習の受講
(日本語能力A1相当とは、日本語能力試験のN5等になります。基本的な日本語能力が必要になります。)
↓
在留資格:育成就労
在留期間は原則3年間です。
就労期間に「技能検定基礎級等」と「日本語試験(A1相当以上の水準から特定技能1号移行時に必要となる日本語能力の水準までの範囲内で各分野ごとに設定)」の合格が、転籍の条件となります。
↓
「技能検定試験3級」や「特定技能1号評価試験」+「日本語能力試験(A2相当以上)」の合格で
在留資格:特定技能1号に移行
在留期間は5年間
育成就労を経ずに外国で試験を受験して特定技能1号で入国することも可能。
特定技能1号の試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。
↓
「特定技能2号評価試験」+「日本語能力B1相当以上の試験」の合格で在留期限が制限のない
在留資格:特定技能2号に移行
現行の技能実習制度でも特定技能1号への移行は可能ですが、育成就労制度は、特定技能制度へのスムーズな移行を前提とした設計です。
育成就労制度では、家族の帯同は原則として認めないこととしています。特定技能2号へ移行した場合は、家族帯同が可能になります。
派遣形態での就労は原則として認められませんが、季節性のある特定の分野(農業や漁業)に限り例外的に認められる予定です。
育成就労制度の監理支援機関と技能実習制度の監理団体との違い
監理支援機関は監理団体と同様の、受入れ機関に対する監理・指導、育成就労外国人の支援・保護等を行うことになります。その上で、育成就労制度では、監理・支援・保護機能を強化する方向で許可の要件を見直すこととしています。監理団体は自動的に監理支援機関に移行できるわけではありませんので、新たな許可要件を満たした上で監理支援機関としての許可を新規に取得する必要があります。
まとめ
日本社会の課題である人手不足に対応し、外国人材のキャリアアップを促進するために、国際貢献を目的とした技能実習制度に代わる新しい「育成就労制度」が始まります。
育成就労制度は、企業にとっては長期的な人材確保が期待できる制度です。施行に向けて、各企業や支援機関の準備が重要となります。


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