会社設立を検討されている皆様、定款の目的に何を書けばよいか迷っていませんか?
定款の目的は、会社の事業内容を示すもので絶対的記載事項です。
絶対的記載事項は商号、目的、所在地、設立に際して出資される財産の価格又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所の5つで、絶対的記載事項の1つでも欠けると定款事態が無効になります。
適切に記載しないと、後々の融資申請や許認可取得で思わぬトラブルに発展することもあります。
今回はそんな会社の「目的」について解説していきます。

定款の「目的」とは?会社設立に必須の基礎知識
定款の目的が絶対的記載事項である理由
定款とは、会社の基本的なルールを定めた「会社の憲法」とも言える重要な書類です。その中でも「目的」は、会社法第27条で定められた絶対的記載事項の一つとなっていて、会社が行う又は将来行おうとする事業の内容のことを指します。
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない5つの項目を指します:
- 商号(会社の名称)
- 目的(事業内容)
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
この5つのうち、1つでも欠けていると定款自体が法的に無効となり、会社設立の登記申請が受理されません。法務局での審査で却下され、定款の作り直しが必要になるため、会社設立が大幅に遅れてしまいます。
特に公証人の認証を受けた後に不備が発覚すると、再度公証人手数料(約5万円)が必要になるケースもあり、金銭的な負担も発生します。そのため、定款作成時には目的の記載を慎重に行う必要があるのです。
会社の目的が果たす3つの重要な役割
会社の目的は、単なる形式的な記載ではありません。以下の3つの重要な役割を果たしています。
①会社の事業範囲を明確化する役割
目的に記載された事業の範囲内で、会社は営業活動を行うことができます。これは「権利能力の範囲」とも呼ばれ、会社が法的に何ができるのかを示す基準となります。
例えば、「飲食店の経営」のみを目的に記載している会社が、突然「不動産の売買」を始めることは、厳密には定款の目的外行為となります。実務上は「前各号に附帯または関連する一切の事業」という包括条項を加えることで柔軟性を持たせますが、基本的には目的に記載された事業が会社の活動範囲となるのです。
②対外的な信用力を示す役割
定款の目的は、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも閲覧できる公開情報となります。金融機関が融資審査を行う際や、取引先が新規取引の検討をする際に、必ずこの目的欄をチェックします。
具体的で明確な目的が記載されていれば「この会社は何をする会社なのか」が一目で分かり、信用力が高まります。逆に、曖昧な記載や関連性のない事業が無秩序に並んでいると「実態が不明確な会社」という印象を与え、取引を敬遠される可能性があります。
③許認可取得の要件となる役割
建設業許可、宅地建物取引業免許、飲食店営業許可など、多くの許認可申請では定款または履歴事項全部証明書の提出が求められます。その際、該当する事業が目的欄に明記されていることが許認可の取得要件となっているケースが大半です。
例えば、建設業許可を申請する場合、定款の目的に「建築工事業」「土木工事業」などの具体的な記載がなければ、申請自体が受理されないことがあります。後から目的を追加する場合は、登録免許税3万円が必要になるため、最初から必要な事業を盛り込んでおくことが賢明です。
目的の記載例と実際の書き方のポイント
定款における目的の標準的な記載例は以下の通りです:
(目的)
第〇条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
1 ○○の製造及び販売
2 ××の輸入及び販売
3 前各号に附帯又は関連する一切の事業
記載の基本ルール:
- 各事業を「1.」「2.」と番号で区切って列挙する
- 事業内容は具体的かつ簡潔に表現する
- 最後に包括条項「前各号に附帯または関連する一切の事業」を加える
- 一つの事業内容は原則として1行または2行程度にまとめる
複数の異なる業種を営む予定がある場合でも、関連性は問われません。全く異なる業種を並べることも可能です。(例: 1. 飲食店営業、 2. 建設業)
ただし、あまりにも多岐にわたる事業を羅列すると「事業の焦点が定まっていない会社」という印象を与える可能性があるため、実際に行う予定のある事業に絞ることをお勧めします。
定款の記載例は以下になります。
定款の目的を記載する際の5つの重要な注意点
将来行う事業も含めて記載すべき理由とバランス
定款の目的は、会社設立後でも変更(事業の追加や削除)が可能です。しかし、目的変更には以下のコストと手間がかかります:
目的変更にかかる費用:
- 登録免許税:3万円
- 司法書士に依頼する場合の報酬:3〜5万円程度
- 株主総会の開催費用(株主総会議事録の作成など)
さらに、変更手続きには通常2週間程度の期間を要します。許認可申請の直前に目的の記載漏れに気づいた場合、申請スケジュールが大幅に遅れてしまうリスクがあります。
将来事業を含める際のポイント:
今すぐ始める予定はないものの、3〜5年以内に展開を検討している事業があれば、設立時の定款に含めておくことをお勧めします。
一方で注意すべき点:
目的が10個、20個と多すぎる場合、以下のようなデメリットがあります:
- 会社の事業の焦点が不明確になる
- 金融機関から「何をする会社か分からない」と判断される
- 取引先から信用力が低いと見なされる可能性がある
実務的には、5〜10個程度の目的に絞り、本当に必要な事業のみを記載することが適切です。「念のため」と無関係な事業まで含めることは避けましょう。
「前各号に附帯または関連する一切の事業」の使い方
ほとんどの会社の定款では、目的の最後に「前各号に附帯または関連する一切の事業」という包括条項が記載されています。この条項にはどのような意味があるのでしょうか。
包括条項の機能:
この条項があることで、個別に記載した事業に「附帯する」または「関連する」事業については、追加の目的変更なしに行うことができます。
例えば、目的に「飲食店の経営」と記載している会社が、以下の事業を行う場合:
- 飲食店で使用する食器の仕入れ販売 → 包括条項でカバー可能
- 飲食店スタッフ向けの研修サービス → 包括条項でカバー可能
- 飲食店のフランチャイズ展開 → 包括条項でカバー可能
包括条項の限界:
ただし、この包括条項は万能ではありません。あくまで「附帯または関連する」事業に限られるため、全く無関係な事業は含まれません。
例えば、目的に「飲食店の経営」のみ記載されている会社が、「不動産の売買」や「金融商品の販売」を行うことは、包括条項があっても認められない可能性が高いです。
許認可申請における注意点:
許認可申請では、包括条項だけでは不十分で、具体的な事業の記載が求められるケースがほとんどです。例えば:
- 建設業許可 → 「建設工事の請負」などの明確な記載が必要
- 宅建業免許 → 「宅地建物取引業」の明記が必要
- 古物商許可 → 「古物営業法に基づく古物商」の記載が必要
そのため、包括条項はあくまで補助的なものと考え、主要な事業は個別に明記することが重要です。
事業内容の具体性とバランスの取り方
定款の目的を記載する際、「どこまで具体的に書くべきか」は悩ましいポイントです。
具体性が求められる理由:
旧会社法では「具体性」が定款の目的の審査基準の一つでしたが、現行会社法では廃止されました。そのため、「商業」「事業」といった抽象的な記載でも、形式的には登記が受理されます。
しかし、実務上は以下の理由から具体的な記載が推奨されます:
- 金融機関の融資審査: 抽象的な目的では事業内容が判断できず、融資が受けにくくなる
- 取引先の与信審査: 「何をする会社か分からない」と判断され、取引を断られる可能性
- 許認可申請: 具体的な事業名の記載がないと申請が受理されない
適切な具体性のレベル:
過度に詳細すぎる記載も、逆に柔軟性を失う原因となります。以下のバランスを意識しましょう:
❌ 抽象的すぎる例: 「商業」「各種事業」「サービス業」
❌ 詳細すぎる例: 「東京都渋谷区におけるイタリアンレストランの経営」 → 場所や料理のジャンルまで限定すると、変更時に柔軟性がない
⭕ 適切な具体性の例: 「飲食店の経営」「レストラン事業」「飲食店のフランチャイズ展開」
業種別の記載例:
- IT関連:「ソフトウェアの開発および販売」「Webサイトの企画、制作および運営」
- 製造業:「○○製品の製造、加工および販売」
- サービス業:「○○に関するコンサルティング業務」
- 小売業:「○○商品の輸入、販売および卸売」
このように、事業の本質は明確にしつつ、ある程度の幅を持たせた記載が理想的です。
定款の目的が審査される3つの基準
定款の目的の審査基準は3つあります
①適法性・・公序良俗・法律に違反していないか
②営利性・・利益を出せる事業であるか
③明確性・・目的の内容が明確か
適法性の基準:法令違反や公序良俗に反する事業はNG
定款の目的の第一の審査基準は「適法性」です。これは、目的として記載する事業が法律に違反していないか、また公序良俗に反していないかを審査するものです。
営利性の基準:利益追求が可能な事業であること
株式会社の目的は、原則として「営利性」が求められます。これは、会社が利益を追求し、株主に配当を行うことを前提としているためです。営利性とは、事業を通じて経済的利益(金銭的な利益)を得ることが可能であることを意味します。つまり、収益を上げられる事業である必要があります。「慈善事業」などの利益を追求しないもののみの目的は認められません。
明確性の基準:第三者が理解できる内容であること
目的の第三の審査基準は「明確性」です。これは、目的として記載された事業内容が、第三者(登記官、金融機関、取引先など)にとって理解可能であることを求めるものです。定款の目的は、履歴事項全部証明書に記載され、公開情報となります。そのため、誰が見ても「この会社は何をする会社なのか」が分かる必要があります。
旧会社法からの変更点:
旧会社法下では、内容の具体性も審査基準でしたが現行の会社法では廃止されました。したがって「商業」や「事業等」の記載でも可能です。
ただし具体性を欠く目的は融資を受ける際や、許認可申請の際などでスムーズな取引・申請ができない可能性があるので目的は具体的に記載することが安心です。
許認可が必要な業種と定款の目的記載の実務ポイント
多くの事業では、開始するにあたって官公庁の許可、認可、登録、届出などが必要です。これらを総称して「許認可」と呼びます。許認可申請では、ほぼ必ず定款または履歴事項全部証明書の提出が求められ、該当する事業が目的欄に記載されていることが要件となります。
記載が必要な許認可が必要な業種の例
| 業種 | 目的の記載例 |
| 飲食店営業許可 | 「レストラン」「飲食店の経営」 |
| 建設業許可 | 「建築工事業」「とび・土エ工事業」 |
| 古物商許可 | 「古物営業法に基づく古物商」 |
| 産業廃棄物処分業・収集運搬業 | 「産業廃棄物の収集運搬及び処理」 |
| 宅建業免許 | 「宅地建物取引業及び不動産売買業」 |
| 旅行業許可 | 「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」 |
| 介護事業(訪問介護等) | 「介護保険法に基づく居宅サービス事業」 |
| 労働者派遣事業 | 「労働者派遣事業」 |
定款作成・会社設立を行政書士に依頼するメリット
ここまで解説してきた通り、定款の「目的」一つをとっても、将来の展望や許認可、融資の可能性を考慮した戦略的な設計が必要です。「自分でも書ける」と思われがちな定款ですが、行政書士という専門家に依頼することには、単なる事務代行以上の価値があります。
① 許認可申請を見据えた目的設計
行政書士は、建設業許可、飲食店許可、在留資格申請など、あらゆる許認可や申請手続きのスペシャリストです。前述したように、労働者派遣事業や宅建業などは、特定の文言が定款に入っていないだけで申請が門前払いされてしまいます。 行政書士に依頼すれば、あなたが取得したい許認可に必要な「正解のワード」を正確に盛り込みます。これにより、設立後に「目的変更登記(登録免許税3万円)」をやり直すという、時間と費用の無駄を完全に防ぐことができます。
② 電子定款による「4万円のコストカット」
自分自身で紙の定款を作成すると、収入印紙代として4万円が必要です。しかし、行政書士は専用の機材と電子署名を用いた「電子定款」に対応しています。 行政書士に依頼することで、この印紙代4万円が不要になります。多くの事務所では、この浮いた4万円を報酬の一部に充てることができるため、実質的なコスト負担を抑えながら、プロのチェックを受けられるという大きなメリットがあります。
③本業に集中するための「時間」と「精神的余裕」の確保
会社設立期は、営業準備や備品調達、人材採用など、経営者がやるべきことは山積みです。慣れない法務局や公証役場とのやり取り、間違いが許されない書類作成に数日間を費やすのは、経営判断として大きな機会損失です。 煩雑な手続きを丸投げすることで、初日から社長としての本来の業務に100%の力を注ぐことができます。
まとめ
定款の目的は、会社の商号と同様に会社の顔となる重要な項目です。
定款の「目的」は、一度決めて登記してしまえば、変更するには手間もお金もかかる「会社の骨格」です。
- 絶対的記載事項であり、一つでも不備があれば設立自体ができない
- 事業範囲、信用力、許認可という3つの重要な役割を担っている
- 適法性・営利性・明確性の3基準を満たさなければならない
- 将来の展望と、今の実態のバランスを考えた記載が必要
記載に具体性を欠くと、金融機関からの融資や取引先との重要な取引において支障をきたす場合があります。そのため、事業内容を具体的に記載することが不可欠です。
また、建設業許可や宅建業などの許認可が必要な事業については、その旨を目的として必ず記載しなければなりません。記載がない場合、変更手続きが必要となり費用も発生します。事前に必要な事業を確認し、漏れなく記載することが重要です。

