前回宅建業(宅地建物取引業)の3つの要件についてお伝えしました。

その中の要件の1つである「事務所」について掘り下げて詳しく説明します。
宅建業における「事務所」とは
宅建業法では「事務所」とは、宅建業を行うための拠点のことを指します。
事務所の種類
①本店(主たる事務所)
会社の登記上の本店や個人業者の主な拠点。法人の場合本店として登記する必要があります。
②支店(従たる事務所)
法人の場合支店としての登記が必要で、登記がないと支店とは名乗れません。
本店、支店ともに登記されていなければ本店や支店とは名乗れません。
従たる事務所の登記は必須ではありませんが、登記しない場合「〇〇支店」と名乗れないため、名称は「〇〇営業所」や「〇〇店」といったものが使用されます。
登記していない事務所でも、宅建業法上の事務所に該当する場合は供託が必要です。
事務所ごとに「業務に従事する者5人に1人以上」の割合で、専任宅建士を設置する必要があります。
本店では宅建業を行わないが、支店で宅建業を行う場合、本店も宅建業の事務所扱いとなります。ですので、本店も宅建士の事務所の独立性等の要件を満たさなければならず、営業保証金の供託や専任の宅地建物取引士を置く必要となります。
事務所に求められる物理的要件
事務所に必要な要件は3つあります。
①独立性があること
②継続的に使用できること
③宅建業を行う機能を備えていること
独立性があること
宅建業の事務所として使用するためには、他の事務所や住居と明確に区分されていることが必要です。
他社等と部屋を共同の場合で事務所と認められる場合
他業者と壁や固定式パーテーション(床面からの高さが170cm以上)などで明確に区切られている。
出入り口が他事務所を通らずに事務所に直接入ることができる。
事務所としての形態が整えられ、かつ、事務所としてのみ使用している。
シェアオフィスで事務所と認められる場合
時間帯利用でないことや、契約者以外立入禁止のシェアオフィスでない。
商談が可能であり、従事者が業務をできる独立したスペースがある。
共有のスペースを事務所することは不可能です。
一軒家の自宅で事務所と認められる場合
玄関部分から事務所に居間等の居住部分を通らずに事務所に入れること。
生活部分と壁などで明確に区切られている。
事務所としての形態が整えられ、かつ、事務所としてのみ使用している。
自宅のリビングの一角を「事務所」とするのは不可能です。
賃貸のマンションで事務所と認められる場合
管理規約上、事務所として使用が認められている。
住居部分と区別され独立性が保たれている。
居住用の場合、家主に宅建業を営む旨と伝えて承諾が下りれば可能です。(使用承諾書が必要な場合もあります。)
継続的に使用できること
一時的な場所は宅建業の事務所として認められません。
テント張り、ホテルの客室、仮設の建設物、実態のないバーチャルオフィスは不可能です。
宅建業専用のスペースがあること
事務机、ロッカー、電話、応接スペースなど、宅建業を営むことができる機能が必要です。
電話は申請時点で開通している必要があります。
まとめ
宅建業の「事務所」は継続的に業務を行うことができる施設で、独立性が必要になります。
必要書類として事務所の写真や賃貸借契約書、保証協会の事務所現地調査があるので
要件を満たした事務所の用意が必要です。
事務所として要件を満たしているか不安な場合は専門家に相談するのがおすすめです。